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大学生を相手に初めて授業する人が準備しておくべき3つのこと|【その2】成績評価の判断材料を厳格に決めておき,それに対応した授業を展開する

【その1】15週分の計画は予め具体的に決めておく,の続きです


今回は,【その2】成績評価の判断材料を厳格に決めておき,それに対応した授業を展開するについて解説します.


全体を整理しておくと,授業を担当する上で重要なことは,この3つです.
大学で授業することが初めてでビビってる人や,既に1年やってみたけど失敗し,ちょっと悩んでいるという人は確認しておいてください.

【その1】15週分の計画は予め具体的に決めておく
【その2】成績評価の判断材料を厳格に決めておき,それに対応した授業を展開する ←今回はここの話
【その3】私語を絶対にさせない環境にする

実のところ,今回紹介していることの詳細は「大学授業の基本」として,たくさんの書籍が販売されています.
この記事で興味をもったら,その詳細については以下を御覧ください.
   




【その2】成績評価の判断材料を厳格に決めておき,それに対応した授業を展開する


前回の,
【その1】15週分の計画は予め具体的に決めておく
でお話したように,授業全体の計画を事前に立てておくことが大事です.

そして,この「事前計画」は,教員だけでなく学生とも共有しておく必要があります.

「教員と学生との間で共有された事前計画」から外れてしまうと,学生は一気に授業から関心を失います.
それだけでなく,ひどい場合には教員に対する人格攻撃にまで発展することがあるので注意が必要です.

それは,どれだけ教員が優しく丁寧に対応しようと,どれだけ下手に出て甘々に対応しようと関係ありません.

ここを勘違いしている教員が,
「こっちがこれだけ親切に対応しているのに,どうして舐め腐った態度をとってくるんだ!」
とキレることになります.
しかし,悪いのは私たち教員側です.


考えてもみてください.
自動車教習所で,習ったこともない運転方法を突然課され,上手くないから今回はハンコ無し,なんて対応をされたら生徒は怒りますよね.
そこで丁寧に説明しても生徒は納得いかないでしょうし,甘く対応したら舐めてきます.

次の日からは,意識が高い生徒は気合を入れるでしょうが,普通の生徒は学習意欲を下げるか退学します.
それと一緒です.

【心構え】「これができたら合格です」を最初に提示して,その評価基準を動かさない


大学とは,「学習指導要領」をもとに授業で生徒に課すべき課題が全国的に決まっている学校とは違い,大学教員の胸三寸で「課題」を決めることができます.

その授業における要点や重要事項を,事前に知っている大学教員としては,そのことを考慮せずに,次々と「学生にとって良い課題」を思いついちゃうんです.
これがトラブルのもと.

私もそうでしたが,若い教員ほどこれが顕著.
多分,学生にマウントとろうとしてるんでしょうね.
この授業や領域(そして私)を舐めるなよ,って気分になっていたんだと思います.


授業期間の途中で何か良いコトを思いついても,それを授業やテストで採用するかどうかは慎重にしてください.
っていうか,やらない方がいい.
それやって上手くいくケースはほとんど見たことないですから.

あくまでも,
事前に決めていおいた成績評価に関する判断材料を守り,それに応じた授業やテストを実施する!
ということが大事です.

もちろん,これについては反論もあるでしょう.
「そんなことは授業を展開してみないと分からないではないか」と.

これについての詳細は
【その1】15週分の計画は予め具体的に決めておく
でも述べましたが,結局のところ後手後手に教員が迷走しているだけの話です.


その授業を担当している教員は,その授業で扱っているものを事前によく知っている,理解している人だという前提があります.

そんな人が,授業をやっている途中で,
「もっと別の観点を展開しよう」
とか,
「思ったよりも進んだから,もっとこんなことも与えてみよう」
などとフラフラすると,極一部の優秀な学生であれば喜んで対応しますが,その他の平均的な学生にとっては迷惑でしかありません.

むしろ,その授業で最も大事だったはずのことが失われる危険の方が大きい.


誤解しないでください.
「思ったよりも進んだから,もっとこんなことも与えてみよう」
と考えるのは悪いことではありません.

それは,想定していたよりも学生が優秀だったということです.
言い換えれば,あなたの授業計画スキルが低くて,授業の難易度設定が間違っていたと認めるべきです.

しかし,それを今後の授業計画に生かすことは考えても,今期の授業において成績評価に関する判断材料のレベルで変更することはNG,ということです.


ただ,こういうのは,そこまで深刻な問題だと頭を抱えることもありません.

授業難易度が低いと感じたら,テストやレポートの難易度を変えずに,授業で展開する内容の難易度は上げてもOKです.
大切なのは,成績評価に関する部分は変えないことであり,あとのことは「蛇足」として扱えましょう.

むしろ,優秀な学生であれば,成績評価に関係なく喜んで授業を聞いてくれます.
その他の平均的な学生にとっては,張り合いがなくて退屈するかもしれませんが.


そんな諸々のトラブルを防ぐためにも,私としては,【その1】でも紹介した,
「テスト問題を事前に公開する」
をオススメします.

テスト問題を,授業の進行状況に合わせて作成する教員もいますが,あれは避けた方がいいです.


【対策】あとあと面倒なトラブルになる「授業態度に関する指導」は事前に周知・共有しておく


他にも,遅刻・欠席や受講態度による成績への影響も同様です.
居眠りや私語やスマホ・携帯の利用などもそうです.

これらは,必ず第1週目の授業で確実にルールを共有しておきましょう.

指摘を受けても守らない場合には,氏名・学生番号を確認して,厳格に評価に影響させることを伝えます.
そして,それをしっかりと適応することです.

ここで甘く対応したら,学生は絶対に舐めてきます.

学生が舐めてくるもんだから,教員も思わず感情的になって「その場限りの厳しい対応」や「事前に周知していない罰則を課す」ことをしがちです.
これが「Fラン大学」と呼ばれるところであれば,火に油を注ぐことになります.
っていうか,こういうのは実社会でもトラブルになりますよね.


「大学生なんだから,注意しなくても自分たちで学習環境を保全すべき」
というのは,教員側の怠慢と甘えです.

バカバカしいでしょ.
「大学生なんだから」
って,どういう理屈ですか?


たとえ社会人であっても,ちゃんと聞こうが聞くまいが,評価に影響しないシステムの授業を60分も90分も座って聞かされれば,居眠りしたり遅刻したり遊んだりします.

通常,そういう聴講態度を取る人は,社会人であっても係員に連行されて退室させられます.
それが嫌で,恥ずかしいから,人は黙って講義を聞くのです.


普通の授業では「係員」がいませんから,教員が一人で対応しなければいけません.
ですから,この「連行する係員」の仕事を教員がやるのです.


授業を妨害する行為や態度に対する罰則を事前に決めておき,そうした事態に対しては,落ち着いてしっかり適応しましょう.

どんなルールを敷けばいいのか悩んでいる方は,以下を参考にしてください.


***ルールの例***
欠席・遅刻について
1)1回の欠席で◯点減点
2)2回の遅刻で◯点減点(欠席と同じ扱い)
3)1回の早退で◯点減点
欠席・遅刻等に特別な事情がある場合は,その理由によって考慮される場合がある.
担当教員(私)と相談し,必要書類を提出すること.


以下の行為を見つけた場合,当該学生を「退室処分」にする
1)私語
2)携帯・スマホ利用
3)居眠り
4)その他授業妨害
指摘を受けた学生は,学生証を提示して氏名・学生番号を明らかにし,授業の妨げにならないよう,速やかに退室すること.
その学生の評価は◯◯(累積2回で不合格など)とする.

※ちなみに,私は携帯スマホ利用と居眠りはOKにしています.
授業内容についてネットで用語を調べたくなる人はいるでしょうし,居眠りはイビキをかかない限り迷惑にはなりませんから.


繰り返しますが,この授業内ルールの共有で重要なのは,該当する学生に「ちゃんと適用すること」です.
決して,「これ以上続けると,退室にするぞ」などと,「脅し」でやってはいけません.
絶対にです.

ルールを「脅し」で使うと,判断基準がブレブレになって学生もつけ上げってきますし,
「先週の◯◯さんはスルーされて,今週の私は一発アウトなのはおかしい!」
と言い出す学生も出てきます.
これがこれじれると極めて問題です.


脅すとしても,その授業時間において最初に該当する学生を見つけたら,
「おいそこ,私語をやめなさい.それ以上の規模になったら退室にしますよ.他の人も気をつけてください」
と言って,一度だけ「全体に警告」を出しましょう.
大事なのは,そういう警告を何度も出さないことです.


もう一つ重要なのは,「学生証を提示して氏名・学生番号を明らかにさせる」ことです.
これをせずに対処すると,虚偽の氏名・学生番号を回答される場合があります.
これがもとで,余計に面倒なことになることがあるので,必ず「学生証」を提示させましょう.

もし持っていなければ,それはそれで大問題です.
一般的な大学では,大学構内に入るためには学生証の携帯が義務付けられているはずです.
出欠確認のためにも学生証が必要な大学は多いですし,不正利用しているのであれば,これも粛々と処分してください.


あと,欠席と遅刻の扱いの注意点ですが,
「出席1回で◯点」
という評価はダメです.

なぜかというと,出席することで成績が加点されると勘違いさせることになるからです.
本来,授業には出席するものです.
出席それ自体に加点要素を加えるのは,のちのち面倒を起こします.
(実際のところ,出席を点数化しないというのは大学界全体の共通認識になってきましたが)




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