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和田先生が「真の教員働き方改革実現に向けて」をアゴラに寄稿しました

このブログでも何度かご紹介している,和田慎市先生がアゴラに記事を寄稿しました。

和田先生とはこのブログを通じて6年前(2013年)に知り合い,以来,オフラインでも情報交換をさせてもらっている方です.

昨年には,教員志望の私のゼミ生と一緒に懇親会を開きましたし,それ以前も毎年,東京都の高校教員を交えた「教育対談(という飲み会)」を開催してきました.
その時の様子はこちらをどうぞ.




和田先生はこれまでにも,様々な講演会の講師やネット記事に寄稿されています.例えば,

ブログも開設されていて,そこでほぼ毎日更新されています.
わだしんの独り言
気になる方は,ぜひ御一読ください.

今回のアゴラの記事は,真の教員働き方改革実現に向けて です.
ご案内の方も多いかと思いますが,学校教員の仕事時間が過労死ライン(1ヶ月あたり80時間)を大幅に超過していることが常習化しているため,国(中央教育審議会)は「働き方改革」として,
残業時間の上限を原則「月45時間、年360時間」以内
とする方針を打ち出しました.
これにより,教員の残業時間が減ることを期待しているようですが.

結論から言えば,それは無理です.
ということを和田先生が寄稿されています.

どうしてダメなのか?
和田先生の記事から引用します.
実は教師の仕事はどこまでやっても明確な終わりがないのです。クラスの児童生徒のために学級新聞を作成したり、発達障碍児のために独自の指導法を考えたりと、頼まれなくても自主的に取り組む仕事が多いからです。
従って現状のままタイムカードを導入しても、チェック後も残業することになるでしょうし、残業手当が無支給のままでは管理職や教委が実退室時間をチェックするとは限りません。
常葉大の調査によれば、静岡県内公立中学校の教員は「勤務時間外の仕事」を平均1日4時間(過労死ラインの月80時間)以上行っており、改革案と現実とのギャップが大きいことがわかります。
これほど残業をしながらも「仕事にやりがいがある」と答えた教員が93%、「授業が楽しい」が92%と極めて高いことから、勤務時間の長さが根本の問題ではないはずです。



これは類似した公務関係の職業に総じて同じことが言えると思います.
我々大学教員もそうですし,自衛隊や警察,消防,医師,役所関係も同様でしょう.
どれだけ「ブラック労働環境」と言われようと,使命感がそれを上回ります.
例えば,未婚の20代の助手や大学教員なんかは,研究室に寝泊まりして,家に帰るのは週に3〜4日という人もいますので.

しかし,こうした個人的な「使命感」や「職業倫理」にいつまでも甘えることはできません.
何事も,必ずリミッターがあります.
どれだけNG◯48のことが好きで好きでたまらない人でも,スキャンダルが続けばファンをやめたくなるものです.それと一緒.

では,学校教員にとって心砕かれる仕事とは何なのでしょうか?
これについても,和田先生はこのように解説しています.
ではなにが疲弊を感じる仕事かといえば、8割以上が「教委の計画訪問に対する指導案作成」「文科省(教委)からの調査」「保護者対応」をあげています。
働き方改革は制度・法を中心にした外部からの改革と、学校や教師の取組を中心とした内部からの改革がありますが、内部から働き方改革しようとしても対象となる仕事の多くが直接児童生徒に関わるだけに、子供のために時間を割くことを惜しまない教師集団が仕事を精選することはかなり難しいのです。
しかし答申は労働時間短縮の数値目標だけ決めて、どれ(どこ)を精選すべきかほとんど現場に丸投げしており、本来行うべき改革を意識的に避けているかのようです。まず先に学校の外から制度改革を実行しない限り内部からの改革が進むことはありません。
つまり教員の真の働き方改革の具体的方法は、まず「直接児童生徒に関わらない仕事」や、「教員がしなくてよい仕事」を具体的に指定し職務外と定め、そのことを他の法改正とともに全関係者に遵守させることです。
最後に太字にしたところは,これも公務関係の職業に総じて同じことが言えることです.
そもそも,公に奉じる職業に就いてる人々は「これだけできればOK」という線引を「内部」では許しません.
ここが民間とは異なるところです.

それにちょっと関連する記事として,
■教育現場,結局,ドラッカーはどうなった?
があります.御一読ください.

例えば,残業時間を超過しているからと生死をさまよう急患を見捨てて帰宅する医師はそうそう居ませんし,非番であっても秋葉原とかで通り魔殺人事件が発生したら犯人を取り押さえるのが警察官というものです.

ですから,どうしても「仕事を減らしたい」というのであれば,外部,つまりトップダウンで命令する必要があります.
それを逆に,
「やらなくていいことを内部で決めてよ.それに違反している人がいたら報告しろよ」
って言っても意味ありません.

なぜなら,残業時間を超過してもそんなものは報告せず,内部でもみ消すからです.
残業しないとやっていけないのであれば,残業が無かったことになります.




これはちょうど,「いじめ問題」と同じです.
いじめが存在しない学校が普通の学校.
だから,いじめがある学校や教師にはペナルティだ.
ということになれば,学校としては「本校にいじめは存在しない」と言い出すものです.

そうならないようにしたいのであれば,トップダウンで「教員がしなくていい仕事」を指定しなければいけません.
もっと言えば「教員がしてはいけない仕事」を決めるのです.

同じような境遇で話題になっている公的機関が自衛隊です.
自衛隊は,ぶっちゃけて言えば「軍隊」です.
ところが,自衛隊は一般的な軍隊とは異なり,「やってはいけないこと」を定めて,それ以外のことを自由にやる「ネガティブリスト方式」で仕事ができません.
「これをやれ,あれをやれ」という「ポジティブリスト方式」です.
自衛隊の行動(wikipedia)

その結果,仕事(派兵)がある度に「今回のミッションでやるべきこと」を国会で決めなければいけませんし,どこまでやれば十分なのか? という際限が無くなるので,仕事がオーバーワークになってしまいます.

現在の学校の教師は,これと同じ状況になっています.
ですから,学校現場にも「ネガティブリスト方式」を一部採用して,やってはいけないことを決めたら,あとは自由に教育指導させた方が教師のやり甲斐を守ることができます.

より詳細なことや提案については,和田先生の記事をご覧ください.
最後に,和田先生の記事の言葉で締めたいと思います.
学校現場が取り返しのつかないことになる前に,日本は学校教員について冷静に考える時がきているのです.
それでも早いうちに①~③の制度改革を実施しなければ、教員の実質的勤務時間は減らないまま疲労感が増して学校はブラック化し、教員志望者は減っていくでしょう。
すでに教師バッシング→罰則強化・勤務の制約増→教採試験倍率の低下→教師の質の低下→不祥事・事故の増加→再び教師バッシング のデススパイラルが起こりつつあり、このままでは学校教育は崩壊してしまいます。
教師・学校に一方的に仕事や責任を押し付ける世の中の流れが変わらなければ、教育崩壊が日本の混迷を招き、結局そのツケは国民自身が払うことになるのです。
そうならないため、今こそ全国民が力を合わせて教育環境の改善に取組むべきではないでしょうか。
和田先生が執筆した書籍はこちら↓
  

 
 

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