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現状最強|多重比較のなかで最も検出力の高い「ペリの方法」をエクセルでやる

テューキー・ウェルシュ法とニューマン・コイルス法による「ペリの方法」


以前,一つの多重比較法としては最大の検出力を持つ,
「テューキー・ウェルシュ法」
をエクセル上で行う方法を紹介しました.

最も検出力が高いとされる多重比較|テューキー・ウェルシュ法をエクセルで算出する


今回は,このテューキー・ウェルシュ法の手順に「ニューマン・コイルス法」を重ね合わせることで,さらに甘い結果を出す手法,

「ペリ(Peritz)の方法」

をご紹介します.

ほぼ,t検定を繰り返した結果と同じと言っていいくらい甘い多重比較です.
しかし,検定の多重性を考慮していることは間違いないので,誰からも文句は出ません.

よほど「ペリの方法」が気に入らない統計学者がイチャモンをつけてこない限り,安心して使っていいものです.

どうしても統計学的な有意差があることを訴えたい場合で,テューキー法やボンフェローニ修正では有意性が検出されなかった場合に,エクセルで一手間かければOKです.


では早速,その手法から説明します.


以下の記事を読んでも不安がある場合や,元の作業ファイルで確認したい場合は,
このリンク先→「統計記事のエクセルのファイル」から,
「テューキー・ウェルシュ法」
のエクセルファイルをダウンロードしてご確認ください.
※ペリの方法は「エクセル上で算出する」タイプの方法ではありませんので,テューキー・ウェルシュ法のファイルをご活用ください.





「ペリの方法」をエクセルでやる


例データは以下のようなもの.
まずは「テューキー・ウェルシュ法」の結果を出さなければいけませんので,

テューキー・ウェルシュ法の記事
最も検出力が高いとされる多重比較|テューキー・ウェルシュ法をエクセルで算出する

を見て,そこで算出済みというところからスタートします.

例となるデータは,以下の状態まで算出済みということをご確認ください.
(例示しているデータは,テューキー・ウェルシュ法の記事と完全に同じものです)



ペリの方法は,このテューキー・ウェルシュ法の結果とニューマン・コイルス法の結果を重ね合わせるものなので,ここにニューマン・コイルス法を算出する必要があります.


と言っても,ご存知の方も多いかと思いますが,ニューマン・コイルス法は,

甘すぎる(第一種の過誤を起こしやすい)多重比較であるため不適切

とされています.


いろいろな統計処理ソフトにも装備されていますが,「フィッシャーのPLSD」と同様,

「使用してはいけない多重比較法」

として有名です.

「使っては行けない」のに,どうして装備されているんだろうと不思議に思う人もいるでしょうが,それには様々な理由がありますので割愛します.


【手順1】ニューマン・コイルス法を行なう


ニューマン・コイルス法は,甘すぎるテューキー法と言えます.

一般的には「スチューデント化された範囲の表」を使って棄却限界値を見つけるのですが,今回のテューキー・ウェルシュ法で「F分布」を用いていますので,それを利用します.

5%有意水準のものしかありませんが,F分布表はこちらです.
(クリックすれば拡大して見れます)


F分布表は,このリンク先→「統計記事のエクセルのファイル」の,
「テューキー・ウェルシュ法」
のエクセルファイルにも入っています.


ニューマン・コイルス法では,比較する「群数 − 1」と「誤差自由度」の値を見ます.

今回のデータであれば,

ステップダウンしながら比較する群数:5〜2
誤差自由度:30

ですので,最初の5群比較では「φA=4」「誤差自由度=30」のところを見ます.
すると,値は,「2.690」であることが分かります.
ここからもう一つの4群比較までは,テューキー・ウェルシュ法と同じです.


違ってくるのは3群比較からです.
テューキー・ウェルシュ法では「テューキー・ウェルシュ法のための表」を使用しますが,ニューマン・コイルス法ではそのまま「群数 − 1」を続けます.

ですので,「φA=2」の「誤差自由度=30」の値を使います.
値は「3.316」

2群の対比較の部分は「φA=1」の「誤差自由度=30」.
値は「4.171」


これを全て入力済みにしたものが以下です.

TW法はテューキー・ウェルシュ法のこと,NK法はニューマン・コイルス法のことです.





【手順2】ステップダウン手続きによってニューマン・コイルス法の有意性を確認する


テューキー・ウェルシュ法と同様,一番上の5群のところから有意性を確認していきます.

先程確認した数値は「5%水準での棄却限界値=有意か否かの値」です.

「統計量F」がこの値より大きければ,その組み合わせのところは「有意差あり」として扱えます.


テューキー・ウェルシュ法の記事でも解説しましたが,いきなり一番下の2群の対比較のところを見てはいけません.
注意しましょう.


すると,前述した図のように,5〜3群比較のところは全て有意で,2群の比較のところは青字にしたところが有意であることが確認できました.


【手順3】ニューマン・コイルス法で有意だった場合は,テューキー・ウェルシュ法の基準で精密検査ができる


ここからちょっと込み入った話になります.


今回の例データであれば,図を見てもらうと分かるように,

「2群比較のBEのところ」

の判定基準が両手法で違っていますね.

テューキー・ウェルシュ法では「有意差なし」ですが,ニューマン・コイルス法では「有意差あり」です.


ペリの方法とは,ニューマン・コイルス法で有意性が認められた組み合わせについては,テューキー・ウェルシュ法の基準で,いわば「精密検査」ができると考える方法です.


その「精密検査」とは,難しい言い方をすれば以下の2つ.

検査A:ステップダウン手順を無視して,統計量Fをテューキー・ウェルシュ法の棄却限界値と比べる

検査B:有意性の不一致が現れた組み合わせ以外の有意性を調べる

というもの.
上記の検査のいずれかに「有意性」が認められるかどうか検査するのです.


意味が分からないと思いますので,具体的に示します.


今回のこの例であれば,「BE」の組み合わせで有意性の判定不一致が起きています.

まず,精密検査の1つ目,「検査A」をしてみましょう.

テューキー・ウェルシュ法の棄却限界値は「6.006」,BEの統計量Fは「5.533」ですから,この検査では「有意差なし」となります.


では次に,検査Bである,「その組み合わせ以外の有意性」を検査しましょう.
不一致が現れたのはBとEですから,それ以外の群は「ACD」です.

まず,一つ上の階層である「ACD」の組み合わせをみると,棄却限界値が「3.937」であるのに対し,ACDの統計量は「25.424」ですから「有意差あり」です.

次に,AC,AD,CDの組み合わせです.
すると,棄却限界値が「6.006」であるのに対し,ACは「17.536」,ADは「50.037」,CDは「6.805」であり,全て有意です.

検査Bで有意性が認められましたので,BEは有意差ありとなります.



当然のことながら,テューキー・ウェルシュ法とニューマン・コイルス法の両方とも「有意差なし」と判定結果が一致していれば,そのまま「有意差なし」です.


まとめると,この例データであれば,ペリの方法による判定結果は以下のようになります.




その他の例


前述した例以外のパターンも,具体例でお示ししておきます.


例えば,テューキー・ウェルシュ法とニューマン・コイルス法の検定結果が,以下のように違っていた場合はどうでしょうか?


上記のように,

テューキー・ウェルシュ法では「BCE」が有意差なしになっています.
その結果,ステップダウンした次の階層のBC,BE,CEは自動的に「有意差なし」と判定されるのがテューキー・ウェルシュ法です.


しかし,ペリの方法では,ニューマン・コイルス法の検定結果を加味します.
赤字に黄色で塗りつぶしたところが,テューキー・ウェルシュ法とニューマン・コイルス法の判定不一致が起きている場所です.

こうした場合,どのように「検査A」と「検査B」をすればいいのでしょうか.


まず,「BCE」の判定不一致について.

検査Aは成り立ちませんので,検査Bを行ないます.

検査Bとしては,BCE以外の組み合わせである「AD」の組み合わせを見ます.
すると,ADはテューキー・ウェルシュ法でも「有意差あり」となっています.

よって,ペリの方法による判定では,BCEは「有意差あり」です.



次に,BCとBEの判定不一致についてです.

BEは「検査A」によって,BCの組み合わせの統計量F「6.437」が,テューキー・ウェルシュ法の棄却限界値である「6.006」より大きいことが判明しています.

よって,ペリの方法による判定では,BCは「有意差あり」です.



次にBEですが,これは先の例と同じ手順を辿ることになります.
よって,ペリの方法による判定では有意差ありです.





その他の統計手法と比べてみた


「ペリの方法」がどれだけ甘いか,その他の多重比較手法と比較してみました.



テューキー・ウェルシュ法ですら既に激甘なのに,ペリの方法による判定はさらに甘いです.

実際,この例データであれば「t検定」を繰り返した結果と一致します.



ペリの方法の統計学的な理屈としては,テューキー・ウェルシュ法というステップダウン法で検出されなかった部分を,ニューマン・コイルス法の判定基準で拾って再検査するというものです.

これにより,ニューマン・コイルス法の欠点である「大き過ぎる第一種の過誤」と,テューキー・ウェルシュ法の欠点である「ステップダウン法による第二種の過誤の発生」を補い合うものになっています.


検定手順は面倒ですが,どうしても「t検定の結果をそのまま採用できたら嬉しいのに」という場合にはご活用ください.



上記の記事を読んでも不安がある場合や,元の作業ファイルで確認したい場合は,
このリンク先→「統計記事のエクセルのファイル」から,
「テューキー・ウェルシュ法」
のエクセルファイルをダウンロードしてご確認ください.
(上記のように,ペリの方法は「算出」するものではないので,テューキー・ウェルシュ法のファイルをご活用ください)


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