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今年も入試戦争で轟沈してるらしい|そもそも,何について騒いでいるのかサッパリ意味不明な人もいるのでは?

「大学側にとっての入試戦争」を1ミリも知らない人のために


2年前にこの業界から身を引いたんですが,それでも興味はあるわけで.
知り合いが勤めている大学の情報はたまにネット経由で調べてみることもあるんです.

で,この季節ですと「入学試験」についての動向が気になるところです.

例えば昨年であれば,こんな記事も書きました.



カフェ作って喜んでたり,パンを焼いてる場合じゃないってことなのです.


さて今年はどうでしょうね? ということで,この大学のホームページにて「2022年の入試結果」を確認してみました.

やっぱり撃沈していました.

否,昨年の時点で撃沈していたわけですから,今年は着底&水中爆発とでも言ったところでしょうか.

今年の状況について「中の人」とはまだ話していないんですけど,また機会があったら戦況報告を聞いてみたいと思います.



そんな入試戦争ですが,入試の結果は,その大学の経営状態を意味します.
ここで現れる「数値」に一喜一憂する大学関係者も多いものです.

たくさんの志願者が獲得できれば「受験料」が稼げますし,たくさんの受験者が獲得できれば入試倍率が稼げますし,定員通りの入学生を迎えることができれば安定した授業料が稼げます.

そして,
「今年はどこそこの大学が人気」
といった話題にもなるし,一方では,
「最近あの大学は凋落している」
といった話にもなるわけです.

そんなわけで,大学側としてはこの「入試戦争」で自分たちがいかに有利な立場にいるかアピールしたくて,さまざまな方法と工夫をこらしています.
で,そんな「方法」とか「工夫」のなかには,涙ぐましい努力やバカバカしい工作も含まれていて.
それが笑い話としてのネタにもなったりする.


ただ,こうした「話題」があることを知ってはいるものの,その詳細について理解できていないとか,フワッとした認識しかないっていう人もいるでしょう.

実際,私自身が「入試」に全く関心がない人間だったものですから,大学教員になるまで入試にまつわる数字をちゃんと理解していませんでした.
っていうか,そういう人って実は大学教員に多かったりする.

教授会とか学科会議とかでも,入試や学生募集について担当部署の人が熱心に,時に嬉々とした(鬼気の場合や,危機の場合もあるが)態度で解説していても,まったく上の空の教員もいるんです.

「実質倍率では云々かんぬん..」とか,「志願者の述べ人数と実人数の差が云々かんぬん」とか言われても,一体何のことかサッパリ意味不明なもんだから,隣の先生に「これって何を指してるんですかね」などとささやきあう場面も見られます.

今回の記事では,そんな「大学側にとっての入試戦争」において,各大学の入試担当とか学生募集・広報担当の人たちが気にしていることを解説しておきます.


志願者数=大学(学部学科)の人気度だと思われている


どうやらそんな傾向があるらしい.

志願者というのは,
「その大学の入学試験を受けるための手続きをした人」
を指します.

志願者が多いということは,それだけその大学および学部学科に関心がある人が多いのだから,つまりは人気度になっていると考える人が多いわけです.

さらに,大学としては受験するための手続きをしてくれれば「受験料」という収入が獲得できるのです.
一人あたり,だいたい2万円〜4万円くらいが相場でしょうか.

1000人の志願者を獲得できれば,それだけで約3千万円,1万人なら約3億円ですから,かなりの収入源であることがわかります.

だから,大学は志願者数を増やすための努力を惜しまないのです.


そんな志願者数ですが,これを水増しさせる方法がとられることもあるのです.
つまり,「私達の大学は志願者数が多い大学なんですよ」っていうアピールですね.
志願者数が多い大学は「人気の高い大学」と思ってくれるだろうというわけ.

比較的有名な方法が,「併願入試の工夫により,述べ人数での『志願者数』を増加させる」というやつです.

大学入試というのは,一般的に「A大学のB学部のC学科を受験する」という手続きがとられます.

でも,受験生としては「A大学のB学部に入学できさえすれば,どの学科でもOK」という人もいるし,なかには「A大学のB学部C学科か,もしくはD学部E学科に入学したい」とか,もっと言えば「A大学であれば,どこでもいい」っていう人もいます.

けど,かつての大学入試では,こうした要望については,
「申し訳ありませんが,B学部とD学部の入試は同一日に実施されますので,どちらか一方しか受験できません」
などとお断りしていました.

しかし,「志願者数を増加さたい」という目的が優先される昨今,こうした要望を利用して,1つの入試を受験することで,複数の学部学科を受験した(つまり,志願した)という状態を作り出す大学が多くなりました.
実際のところ,受験生の利益にもなるしってことで.

んで,例えば1つの入試で4つの学部学科を指定できるようにすれば,1人の受験者で4人分の志願者数が稼げるっていう寸法です.
実人数としては1人の志願者ですが,述べ人数としては4人の志願者になるというわけ.

これがいわゆる「志願者数における,述べ人数と実数の差」と言われるやつですね.

さらに,併願すれば受験料が割引になりますよ,っていうシステムも同時展開することで,受験者のお買い得感を揺さぶります.
つまり,1つの学部学科の受験なら3万円だけど,4つ併願すれば5万円で済みますよっていう感じで.


あまりにも乱用されることが多かったので,近年では,実人数をちゃんと公表しましょうっていう動きがあるみたいです.


入試における倍率操作


受験の「倍率」が高いと,それだけ難関大学で,格調高い大学であることがアピールできる,と考えられています.
ただ,大学に限らず入試における倍率というのは,何を分母分子にするかで意味するところが違ってきますし,それによって誤魔化しをしようという心も生まれます.

一般的に「倍率」というと,
「志願倍率」
「実質倍率」
が用いられます.

志願倍率というのは,上述した「志願者数」を分子にして,「募集定員数」を分母にするものです.
例えば,20人の募集定員の入試に,60人の志願者がいた場合,

[ 60 ÷ 20 = 3 ]

ですから,志願倍率が3倍の入試ということになります.

この倍率は,募集している定員数に対する志願者数の多さを意味しますので,上述した大学の人気度を表すためのものと言えます.


しかし,この志願倍率は「大学の人気度」を調べたり「学部学科選び」をする上では有用であっても,実際に受験難度を考える上では怪しい数字です.

まず,志願者数という数字はあてにできません.
前述のとおり,併願している人数を含みますし,志願はしたけど,実際に受験はしなかったという人もいるからです.
実際私も,大学入試で第一希望の大学から合格通知が来たので,志願していた別の大学の受験には行きませんでした.

さらに,募集定員数を分母にするのもあてにできません.
なぜなら,これは入試に詳しい人ならご存知のことですが,募集定員どおりの人数で合格者を出したとしても,その合格者全員がちゃんとその大学に入学手続きをしてくれるとは限らないため,大学としては「募集定員よりも多めに合格者を出しておく」という方法がとられるからです.

例えば,20人の募集定員の入試で,合格者をきっちり20人にしてしまうと,その20人の中から「別の大学からも合格通知がきたから,志望上位であるそっちに行く」とか,「併願している他学科を選択する」なんてことが発生します.

なので,20人の募集定員であっても,合格者を50人とか100人とか(大げさではないよ)にしておくんです.
その結果として,22人の入学者を迎えることになったとか,読み違えて15人になっちゃったね,などという話になるのです.
なお,こうした合格者数と入学者数の割合を「歩留まり」と言います.


そんなわけで,実際に受験した人数である「受験者数」と,実際に合格通知を受け取る「合格者数」を使って算出したものが,「実質倍率」というやつです.
実際の入試の倍率という意味があるから,実質の倍率ということ.


さて,こうした実質倍率ですが,これも大学アピールのためにあの手この手で操作されます.
この倍率が高ければ,「うちは入学することが難しい,レベルの高い大学・学部学科ですからね!」っていうことになるからです.


特に,Fラン(と称される)大学で多用される手法を紹介しておきましょう.

Fラン大学にありがちなのが,以下のようなパターン.

募集定員:20名
志願者数:18名
受験者数:15名

そんな状態で,もし合格者数を15名にしちゃうと,倍率が「1倍」になってしまいますよね.
なので,ここであえて合格者数を10名にして,実質倍率を「1.5倍」にするんです.
「受験者全員が合格するような学部学科じゃありません!」っていう.


でも,皆さんからすれば,こんな疑問が湧くでしょう.
「そんなことしてたら,募集定員より下回っちゃうんだから,『定員割れ』という烙印を押されるじゃないか」

なので,大学としてはこの対策として「別の入試で大量に入学者数を確保しておく」という手法が採られます.
それがいわゆる「推薦入試」というやつです.


以下,ゴチャゴチャして難しいかもしれませんが,大学側の涙ぐましいアピール努力を理解するのだと思って,ちょっとお付き合いください.


入試には,大きく分けて3タイプがあります.
1:特別枠入試(特殊技能入試とか,スポーツ入試とか)
2:推薦入試(指定校推薦とか,一般推薦とか)
3:一般入試(いわゆる入試)

これらはたいてい,年度スケジュールにおいて1〜3の順序で実施されます.
なぜなら,1と2によってある程度入学者を確保しておいて,最後に一般入試をすることで「倍率」の調整をしたいからです.

弱い大学ほど,推薦入試まででたくさんの入学者を確保する傾向があるのは,このためです.
「推薦入試」というのは,建前上「推薦」なのですから,特別扱いの入学生だということになります.
ですから,この推薦入試の倍率が低くても「いわゆる大学の学力偏差値」には反映されません.
特別に選んだ入学者なのですから,一般的な学力偏差値とは別ということになるのです.

つまり,実質倍率とは無関係ってことになるわけ.

でも,一般ピープルはそんな複雑なことまで考慮しませんから,
「大学のレベルは一般入試の偏差値,および実質倍率だ」
と思ってくれています.
これを利用するのです.

例えば,前述のFラン大学(学部学科)の募集定員の総合計が40名だったとします.
大学としては,推薦入試までで35名分を確保しておき,残り5人の状態で一般入試に挑むことにするのです.
募集定員20名の一般入試で10名しか合格者を出せなかったとしても,歩留まり考慮で5名が入学してくれれば大成功.

このFラン大学は「実質倍率が1.5倍の大学」として記録されるわけです.



他にも,他学部他学科との抱き合わせで倍率を操作することもできます.
よくあるのが以下のような工夫です.

例えば,このFラン大学の,とある学部(X学部に3学科:A学科,B学科,C学科があるとする)の一般入試結果を,以下のように操作するのです.

A学科
募集定員:20名(実際は残り5名)
受験者:15名
合格者:10名

B学科
募集定員:10名(実際は残り5名)
受験者:15名
合格者:3名

C学科
募集定員:40名(実際は残り40名)
受験者:60名
合格者:60名


この学部におけるC学科は募集定員が多いのに,その人数を確保することが難しくて苦慮しているわけです.
だから,どうしても一般入試では,受験者全員に合格通知を出す状態になりやすいわけですね.

これだとC学科は「実質倍率:1倍」ということになってしまうのですが.
実は,入試情報などで「学科ごとの実質倍率」として表記される機会というのは少なくて,たいていは,「学部の実質倍率」として表記されることが多いのです.
この慣例を利用します.

上記のデータで実質倍率を計算すると,
A学科:1.5倍
B学科:5倍
C学科:1倍
ということになります.

B学科は定員割れになってしまうのですが,この学科をあえて合格者を絞ることで,学部全体としての実質倍率の増加に貢献してもらいます.
その代わりB学科には,例えば学科予算を増やしてあげたり,教員待遇とかでトレードオフにするとかね.

で,これを平均すると,このX学部の3学科の実質倍率は2.5倍に増加します.
学生募集においては,この実質倍率:2.5倍をX学部のレベルとしてアピールするという寸法です.


他にもいろいろな操作,表記の工夫がありますが,そんな涙ぐましい努力で大学アピールをしているわけです.

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