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授業と映画

シン・ゴジラ再考
っていう記事を先日書きました.
チャンネル桜というテレビ局の番組で,
という評論をやっていたことがきっかけです.

そこに出演していた論者の一人である京都大学の藤井聡先生が仰っていたのですが,大学の講義で映画を取り上げることが多いのだそうです.人に何かを伝える際に,映画という媒体が強力に作用するからだということです.

かくいう私も,大学の授業では映画を取り上げて説明することが多い一人です.
体育学やスポーツ科学で伝えたい事が,実はいろいろな映画のテーマと親和することに興味を持ってもらいたいですし,それによって我々の分野の理解が進めば,これに勝る喜びはありません.

特に他学部・他学科の学生にとっては「映画」を用いた解説はとても好評で,リアクションペーパー(小レポートみたいなもの)に「体育学やスポーツ科学を考える上で参考になる映画や小説をもっと教えてほしい」と書いてくる学生もたくさんいます.

究極的な話をすれば,どんな芸術作品であっても,あらゆる学術領域に通ずるところがあります.各学術領域同士も然り.
問題となるのは,それらから互いにとってのエッセンスやメタファーを引っ張り上げたり結びつけたりするスキルなんだと思うのです.

昨今の大学は,「初年次教育」と称される1年生対象の「大学生活入門」みたいな授業をやっています.たいてい,我々が1つのクラスを割り当てられて,担任の先生のようにして大学生活のチューターの役割を担う展開が多いのですが.
そうした授業において,私が彼ら新入生に毎年オススメしている「大学生活の例」が,芸術漬けの生活です.
その一つして,私自身の学生の頃を紹介しながら「映画漬けの日々」を推奨しています.バイトにかける時間を最小限にしてでも,映画をひたすら見なさい.そうでなくても,何でもいいからどっぷり浸れるものを見つけなさいと.
それが「大学生ならではの生活」ではないかと本気で思います.

私の場合,映画マニアほど見ていたわけではありませんが,TSUTAYAの「100円クーポン」なんかを利用して短期で大量にレンタルする方式を採用し,一ヶ月50本を目安にがんばっていました.
あんなふうに呑気に無理ができるのも,学生の頃だけだなと思い返しています.

笑い話の一つとして言うのが,返却まで残り1日(24時間)を前に,まだ見ていない映画が10本あった時の話.てっきり3日間くらいかけて見るつもりが,用事が重なってしまい,「ちょ〜っ,あと1日しかないやん!」って事態になることもしばしば.
ノンストップでテレビの前にかじりつくことになるのですが,そんな時の食事は3食すべて「卵かけご飯」で済ましていたのも良い思い出です.

シャワーを浴びるように映画を見ていくと,なんとも説明し難い「領域」に足を踏み入れることを実感します.
これはきっと英語の勉強と同じことだと思いますし,研究活動とも一緒です.

3年前に私のクラスだった学生の一人が,「1年生の時に先生に言われた映画漬けの生活,ずっとやってきましたよ」って言うんです.
オススメはしたけど指示した覚えはないよ,などと言い返しましたが,「おかげで映画を見る目が変わりました」ってことなんですが.

そう.私もそれまでとは映画を見る目が変わりました.これは研究を考える時と同じ感覚です.
分かりやすい変化としては,「面白い映画」という評価の質が変わってきた.つまり,映画の批判の仕方が「楽しいか否か」ではなく,「興味深いか否か」に変わったんです.

それまでなら「単調でありきたりな展開だから,これは楽しくない.面白くない」と思っていたであろう映画も,作者や監督,役者らがこの映画によって何を伝えようとしているのか,何をやりたいのか,という点に目が向くようになるのです.

楽しい作品ではないけど,この映画を見ることで何かしら自分に得るものがあるのではないか? これを見ることで自分の考えが広がったり深まったりするのではないか,という点に関心が出るようになりました.

例えば,かつて私が見た「クソ映画」の筆頭が,ハリウッド版『ドラゴンボール』なのですが,これも「なぜ私はこの映画がダメだと思うのか」と考えさせられる作品だったと思うようにしています.
で,そんな記事も書いたことがあります↓

ここ何年かは,なんとなくですけど映画から足(目)が遠退いておりました.さながら「見るべきほどのことは見つ」という気分になっていたのですけど,同じ作品であっても繰り返し見ることで新しい発見もあります.新作もそれなりに面白い.

最近はHuluという動画サイトで映画を見るようになっていますので,今後はこのブログでも「体育学的映画論」という観点から論じられれば面白いかと思います.
まあ,体育学とかスポーツ科学にこだわらなくても,私なりの映画の見方をご紹介していくつもりです.

過去の映画論記事
(思いつく限り列挙してみたのですが,意外とたくさんの記事を書いていたんですね)