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バカは自分を賢いと思いこみ,例えばこんなことをする

バカとは,自分を賢いと思いこむ人間のことだそうです


バカについてマジメに考察した本を紹介し,そんな話を年末にしました.

そこで紹介したのが,ジャン=フランソワ・マルミオン著『「バカ」の研究』です.


せっかくですから,この本の中身について,もうちょっと話しましょう.

この書籍は,バカをマジメに考察するものです.
なので,本書の最初の章に,ブルターニュ・シュッド大学で心理学研究をしているセルジュ・シコッティ氏による「バカについての科学研究」が述べられています.

それによると,「バカ」を科学することは可能だそうです.

しかし,バカという存在や対象を定義して科学することは困難なため,その解釈としては,
「『こいつバカだなぁ』と評される行動や振る舞い,思考パターンついての研究」
になります.


バカは注意力が低い


まず基本的なものとしては,認知や注意に関する研究です.
これは例えば,交通事故とか忘れ物,見落としや勘違いに関する研究と言えます.
バカと評される人は,そういう振る舞いをすることが多いわけで,こうした認知力や注意力が通常より弱い傾向にあると言えますが,その罪深さはさほど高くはないでしょう.
それはたんに,
「こいつバカだなぁ.でも,こういうミスって私も時々やるよね」
って感じです.

ただし,こうした研究から言えるバカの傾向は,
「バカな奴ほどエピソードで記憶・学習したがる」
ということです.

バカは数字や複雑な事象を苦手とします.
なので,バカな奴ほど,
「数千人の兵士の死は統計で,一人の兵士の死は悲劇だ」
などと,ドヤ顔で語りたがります.
っていうか,エピソードでないと現象を解釈できないのです.

現在のコロナ騒動で言えば,志村けんや岡江久美子の死亡ニュースでコロナウイルスを怖がるようになるのがバカと言えます.
統計情報が解釈できず,具体的なエピソードで解釈したがるからです.


バカは信じたがる

「すべての正義は報われ,すべての罪は罰せられる」
という考え方を,心理学では「公正世界仮説」と呼ぶそうです.

多少なりとも賢い人は,そんな根拠のないバランスは成立しないと考えているものですが,バカな奴ほどこれを熱心に信じています.

レイプされた女性に対して,
「そんな時間に一人で夜道を歩いていたからだ」
と考えたがり,
「レイプした方も悪いかもしれないが,された女も悪いのだ」
という思考パターンをとりたがるのが,この手のバカです.

当然のことながら,女性が夜道を一人で歩くことは罪ではありません.
100%犯人が悪いに決まってます.
しかしバカは,被害を受けた側にもそれ相応の罪があったに違いないと考えるのです.
その理由は,「世界はそういうものだ(公正世界)」という信念がバカの心にあるからです.

バカをターゲットにした情報配信や映画・ドラマは,その世界観で仕立てられていることが多いですね.

つまり,バカというのは,根拠のない仮説とその世界観を頑なに信じる傾向にあります.
身も蓋もない研究では,バカほど信仰心が強く,知性の高い者ほど信仰心が低いという結果があるようです.


バカは周囲をコントロールしたがる


人間というのは,出来れば周囲のモノを自分のコントロール下におきたいと考えがちです.
なかでもバカは,その傾向が非常に強いことが認められています.

バカは,急いでエレベーターに載った時に,ボタンを力強く何度も押したがります.
バカは,宝くじの番号を自分で選びたがります.

そのくせ,バカは自動車の助手席に載っている時は眠くならないのに,自分が運転している時は眠くなる傾向があります.
自分が運転しているのだから,この車は自分のコントロール下にあるのだと安心するからです.
バカですね.


バカは自分が平均的だと考える


バカな奴ほど,自己評価を一定レベルに維持するテクニックを持っています.
そのテクニックとは,「他人は自分と同じように考えているはずだ」と思い込むことです.
これを「偽の合意効果」と呼ぶそうです.

例えばバカは,道路で一時停止違反のキップを切られると,
「こんなところで一時停止する奴なんていない!」
と逆ギレします.
もちろん,肝心なのはその発言に根拠がないことです.

なんの根拠もなく,
「私のこの意見は,多数派であるはずだ」
と考えているのがバカなのです.
始末に負えないのは,バカな奴ほど,
「多数派は正しい」
という世界観も持ち合わせています.

例えばこのコロナ禍における「自粛警察」は,そうした根拠なき正義感から惹起されていると言えるでしょう.

さらに,バカは自己中心性バイアスが強烈です.
自分と同じ考え方を,相手もしているはずだという思考パターンを持っているのがバカなのです.

高校時代,私の友人は「モーニング娘。」で一番かわいいのは安倍なつみだと考えていました.
そして私に,
「お前は誰がいい?」
って聞いてくるから,
「っていうか,モーニング娘を知らないんだけど」
って答えたら,
「そんなはずはない.痩せ我慢せずに,好きな子を答えろよ!」
ってしつこいんですね.
仕方ないから,その差し出してきたヤングジャンプだかに載っていた集合写真の中で,後藤真希を指したら,さらに怒り出した.
迷惑な話です.

そう言えば昨年,私が「大学教員を辞めて農業をします」と言うと,
「なんでそんなバカなことをするんだ.大学教員でいるのが一番なのに」
と驚き喚いていた人がいました.
これも自己中心性バイアスですね.
そういう人は,ほぼ全員が周囲から「バカ」と評されていた人達です.
その一方で,私の進路に理解を示してくれた人というのは,やっぱり皆さん一角の人物.

尤も,こういう解釈も私なりの「偽の合意効果」なのかもしれませんけど.


バカは専門外のことに自信満々に答える


テレビやラジオのコメンテーターがそれですね.

研究報告によると,
「能力が低い人ほど,自分を過大評価する傾向が強く,他人に自分の価値観を平気で押し付けてくる」
ことが認められているそうです.
これを「優劣の錯覚」と呼びます.

バカはレストランで,プロの料理人を相手に料理の薀蓄を語ります.
バカは英語の発音について,ネイティブの前でも臆せずそれを語ります.
バカは,一介の医師のくせに感染症対策について公共の電波を使って語ります.

さらに,バカはその道の専門家が目の前に現れても,臆せず堂々と振る舞えます.
自分がどれほどバカな言動をしていようと,全く意に介さない度胸があるのです.

もっと悲しいのは,それを見ている側にもバカが多いので,そこで行われている議論を正しく理解できている人が少ないということです.

さらにこの研究分野では,
「バカな奴ほど選挙に行きたがり,知性が高い者ほど選挙に行かない」
という傾向も報告されているようです.

バカは選挙に行かない人を罵ります.
それに根拠はありません.
「選挙で投票した者にだけ,政治に口を出せる資格があるのだ」
という,不思議な世界観で生きているからです.

ちなみに,私もかつてそんな記事を書いたことがあります.



バカには社会不満を持った貧乏人が多い


上記のようなバカに,一部が該当する人物はたくさんいるでしょう.
そういう人は,「こいつバカだなぁ」で済ませられる程度です.

しかし,そのほとんどが該当しているバカもいるはずです.
そんなバカは,周囲もフォローのしようがないので,社会的弱者になっている傾向が強いとされています.

しかも,そうした状況については,自分自身にその原因があるとは考えないのですから,社会や他者に向けた不満は強く持っているものの,自分を変えることでの現状打破は期待できません.

なんとも悲しい話です.

とは言え,一番厄介なのは富裕層にいるバカです.
自分は経済的ヒエラルキーの上層にいるくせに,社会不満と自己中心性バイアスを持っていたりすると最悪です.

っていうか,そういう状態を目指してきたのが近代であり,それが完成しつつあるのが現代社会とも言えます.


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