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昨今の大学用語辞典

最近,適菜収 著『日本をダメにしたB層用語辞典』というのを読んでみました.
何から何まで首肯できるということではありませんが,なかなか面白いものでしたよ.


この本を読んだだけでは,適菜氏が言いたいことは伝わりにくいかもしれません.その他の著書も合わせて読んでみることをオススメします.
文章をそのまま受け取ると,「茶化してフザケてる」と思われてしまうかもしれないので.

そんなわけで,私もこれをマネて「昨今の大学用語」に関する辞典を作ってみました.
全部書ききれた感は無いので,また続編を出すかもしれないです.
以下の記事だけ読んでも私が言いたいことは伝わりにくいかもしれません.最下段に示した記事も合わせて読むことをオススメします.

※謝辞
この辞書を作成するにあたって,何名かの大学教員の協力を得ました.記して感謝の意を表します.

 
 

『昨今の大学用語辞典』


【ICT】(1)授業の質を上げることができるツールだと勘違いされているもの.(2)糖質制限ダイエットや風船ダイエット等に取り組む人と類似した議論が展開されているもの.


【アクティブラーニング】(1)学生の思慮または自己言及の機会を奪うための手段.(2)何かが積極的になったように見える消極的な学習.


【危ない大学】学生を「顧客」,教職員を「社員」と見做す大学.経営難の大学とは同義ではないことに注意.


【アメリカからの圧力】言い訳.その実,できればいっそアメリカ化したいという屈折した願望があったりする.


【一流大学】何がどう一流なのか示されることはないが,なんとなく偏差値と入試倍率で片付けられる概念.


【一本釣り】公募にかけずにコネと人脈を通じて採用すること.大学側としては最も安全で能率的な教員採用方法であるが,大局が見れない者からは妬みを買う.


【イノベーション】(1)後になってみたらプラマイゼロ,たんなるバカ騒ぎ・から騒ぎだったという評価がつくだろう事について,現在進行時においてその事を高評価する言葉.(2)「フランス革命」と同様,いつからか無条件に「良いことだ」と勘違いされた言葉.(3)どこかで誰かが言ってたから,つられてとりあえず言ってみた言葉.意味もわからず多用される.


【英語教育】(1)各大学・各教員が必要に応じてやればいいこと.(2)植民地化政策のこと.宗主国からの支配を求めて股を開くことと同義.(3)日本の教育界のコンプレックスの現れ.


【AO入試】一般に流布されているほど悪い入試ではない.


【FD】(1)成果が出ない労力の意.「骨折り損のくたびれ儲け」とも言う.(2)自分たちの大学の強みと弱みを見つめる行為.(3)学生に私語をさせないために行う教員対象の勉強会.


【オープンキャンパス】お見合いと同義.相手の本当のところは知り得ないイベント.


【おみやげ】オープンキャンパスでもらえる物.毎度,オープンキャンパスのアンケート等で「参加して良かったと思ったもの」の上位に必ず入るコンテンツ.よって大学としてはそこに注力を始めるが,まともな頭脳があれば「おみやげ」によって学生募集につながるわけがない事くらい分かりそうなもの.


【学生目線】(1)学生の現役就職を目指すこと.(2)その場の盛り上がり,賑やかさを考えること.⇒本来は「学生の将来を考えること」であったもの.


【カタカナ】(1)日本の教育者が好むもの.(2)当人としては使用するたびバカにされている自覚は若干あるが,それでも思わず口から出てしまう強力な依存性を有する.


【きぐるみ】「危ない大学」では教職員が着用することが多い.各種イベントで学内を走り回っている.


【キャリア教育】利己主義者養成教育のこと.


【教員評価制度】(1)運営陣に気に入られていると高くなるもの.(2)運営陣に気に入られていると気にしなくていいもの.(3)運営陣を気にしなければならないもの.(4)大学に愛着がなくなれば気にならなくなるもの.


【グローバル化】(1)文部科学省に言われたから取り組むこと.(2)隣の大学がやってるから取り組むこと.(3)一般人にとっては大した関心事ではない.というか実際のところは知られていない.(4)「世界」に追いつけ追い越せとばかりに,反グローバリズムが芽吹いた「世界」に向けて日本の大学が今さら食いついてしまった周回遅れの残念な思想.


【研究】論文数のこと.


【高校訪問】(1)約3年後に学生募集を停止することになるであろう大学しか効果のない営業活動.(2)情緒不安定な経営陣から言われたから取り組むこと.(3)隣の大学がやっているから取り組むこと.(4)小旅行のこと.


【個人研究室】職員室を採用している危ない大学においては,大学監査があった時だけ用意されるモデルルーム.


【コストパフォーマンス】[ 就職率 ÷ 学習時間 ]のこと.これが高いほど喜ばれる.[ 生活時間 ÷ 学習時間 ]を指す場合もある.


【最近のニュース (new!)】大学ホームページのトップページに置かれている「最新情報」が掲載されるコーナー.更新頻度が高い大学ほどイタいとされる.


【3月末入試】経営難大学において実施される,浪人予備軍・残党狩り.主だった大学が合格発表を終えきる3月末に行う入試を指す.


【資格・免許】「足の裏の米粒」とよく言われる.取らないと気持ち悪いが,取ったからといって食えるわけではない.


【自主的に学ばせる授業】矛盾.


【実践力】(1)指導者が学習者に対して行う洗脳活動であり,ある行為について,近い将来に役立つという期待値を増大させ,かつその場でわかった気になれる危険ドラッグ.(2)実践すれば身につく力.


【質保証】もはや保証したいものが「質」ではなく「量」になっているもの.


【社会的要望】無視したところで何か問題が起こるものではないが,なぜか無視せずにはいられない者が「対処」「お応えする」と称して暴れまわることで,結局は中長期には社会のためにならない結果を生み出している昨今の流れの原因.


【就職活動】椅子取りゲームのこと.ノリとタイミングを大事にしないとツラくなる.


【授業評価アンケート】全国一斉に莫大な量の上質紙をムダにすること.製紙会社と印刷会社を潤すための公共政策的な思惑があると信じたい.


【情報公開】自慢と言い訳を足して2で割って,その平方根をとったもの.


【STAP問題】類似したことをやらかしている研究者は多いはずなので,全国的に戦々恐々としているであろうこと.


【スパイ】(1)大学の経営者や管理者が,学内情報を集めるために放っている者.教職員だけでなく,学生もその役を担わされていることがある.(2)大学経営陣に擦り寄るために,自主的に行う教職員も多い.


【世界基準化】(1)教育レベルを世界基準まで下げること.(2)新自由主義的な大学経営にとって都合のいい国のシステムに限って採用すること.


【説明責任】非論理的な論理.


【ゼミ活動】学生と教員が一緒になってなにかしらの甘いモノを頬張る行為.


【戦略】キャッチコピーのこと.「戦略」と銘打った委員会やプロジェクトチームをつくるのが昨今の流行.


【卒業論文】大学らしい教育,最後の砦.


【対案を出せ】頭の弱い人が考え練り上げることを放棄した際に用いるセリフ.


【体育】強い理念のもと指導する教員が多いわけではない,学生にとっての休み時間.本来は大学教育において重要な科目.


【体育会(運動部)】(1)学生募集の特効薬.(2)学内イベント要員.(3)地域貢献イベント要員.


【体育館】危ない大学や経営難の大学のホームページやパンフレットで,なぜか過度にアピールされる大学施設.


【大学案内(パンフレット)】読みにくく文字数が多いほど優れた大学であることを示す.


【大学改革】(1)50年後の「一億総白痴化」を目標とした活動.(2)現役の教員や官僚が責任をとらなくてよい合法的破壊活動.


【大学ポートレート】出会い系サイトの「プロフィール」のようなもの.


【朝礼】毎朝行われる謀反者を取り締まる活動.


【哲学】大学で最も学ぶべきこと.現在ではまともに勉強することはなくなったこと.それが何なのかすら説明できなくなった学生や教員も多い.


【図書館】漫画喫茶.


【任期付】2〜5年の任期を用意した教職員のこと.見えにくいところでルサンチマンを生み出し,学生指導にも悪影響を及ぼしている仕組み.


【認証評価】傷の舐め合い.


【博士号】「足の裏の米粒」とよく言われる.取らないと気持ち悪いが,取ったからといって食えるわけではない.


【バス】「危ない大学」を炙り出す象徴.


【バスの免許】危ない大学においては「博士号」と同等の価値を持つ.


【反転授業】 自然科学者からみればただの後出しジャンケン.


【ビジョン】そう言ってる人こそ見えてないことが多い.


【フランス革命】(1)意味もわからずバカ騒ぎをすること.(2)もう既に現代の大学において,「人類史上屈指の愚行」という認識を持っている人は希少.(3)「イノベーション」と同様,いつからかその本質が勘違いされて「良いこと」なっている事.


【プロデュース】「学生指導」をカタカナ語にしたもの.


【フロンティア】「とにかくなんでもいいから何か新しそうな事をアピールしなければならない」という議題で悩んだ末に出した,その答えをカタカナ語にしたもの.


【ホームページ】読みにくく文字数が多いほど優れた大学であることを示す.


【マインド】「〜〜マインド」などと使用される.さして考える力がなくても何か意義深いことを言った気になれる便利な言葉.


【民主主義】(1)無条件に「良いこと」になっている事の一つ.(2)一昔前であれば,脳筋・バカ野郎が集う体育系大学ですら,その禍々しい欠点について学んでいた政治体制の一つ.むしろ,外野からは「体育バカは身分制が好きで,民主主義を知らない」という周回遅れの文句すら聞かれた.今の大学では,よほど意識的な学者が担当する授業でなければ,その本質が説かれず「マンセー」することが多い.


【喜ぶ顔】「学生の――が見たい」などと使用される.おおよそ教育者の,まして高等教育機関に属する者の発言ではない.


【世論】大学経営の方針を決めるもの.本来は無視すべきもの.


【輿論】大学経営の方針に生かされていないもの.本来は耳を傾けるべきもの


【若い力】学内の政治的シワ寄せにより引っ張り上げられた助教や講師のこと.