2017年7月9日日曜日

SNSを使って「いじめ対策」をするらしい

昨年,こんな記事を書きました.
いじめ防止対策推進法のこと
まず,その記事の結論部分を以下に示します.
ですから,いじめを「防止」して「なくそう」とする思想哲学を持つこの法律では,絶対にいじめ問題に対処することはできません.
仮に「いじめ」を無くせたとしましょう.でもそこには,「いじめ」という名称ではない「いじめ 2.0」が発生したことを意味します
これはちょうど,「クリスマスで寂しい思いをしないために,クリスマスを禁止しよう」っていうのと同じです.恋人がいないことの寂しさは,クリスマスによって発生するものではありませんし,禁止したところで「クリスマスが寂しい」とは異なる別の「恋人がいない寂しい状況」が発生することと一緒です.
そうこうするうち,切羽詰まった人が「出合い系サイト」なんかに手を出すわけですけど.
ここで私の予言.この「いじめ防止対策推進法」,今その改正が検討されているようですが,
いじめ防止対策推進法も,出会い系サイトと同じ思想哲学のことをやり出すであろう・・(例えば,いじめの解決法が文科省の管理サイトとしてアップされるとか)」
この予言が当たらないことを切に祈っております.
どうやら予想が当たってしまうのかもしれません.
文部科学省では,こんな取り組みが始まったようです.
SNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築に係るワーキンググループ(第1回)の開催について(文部科学省HP,2017.7.6)

ほら見たことか,やっぱりこういうことをやり出すのです.
具体的な予想はできなくとも,この国の考え方と,そこから導き出される方向性はだいたい分かるようになりました.

最初はてっきり「SNSを使って行われている『いじめ』に対する相談体制を考える」ものかと思っていましたが,どうやら『いじめ相談』にSNSを活用しようというものらしい.
まだ話し合いが始まっているわけではないから,現段階であぁーだこぅーだと言えませんけど,十中八九,碌なことになりゃしないと諦観しております.

いじめ防止対策推進法にも同じことが言えるのですけど,「そんなこと現場では既にやってるよ.っていうか,邪魔になるから余計な条件付けや指針を作るのはやめてくれ」ということなんです.

ここで問われなければならないのは,
学校でSNSをどう活用するか?
ではなくて,
生徒との対話をどのように進めるか?
ということでしょう.

そうした「学校における生徒と教師のコミュニケーション」に関するヒントや,その抜本的な枠組みの転換(パラダイムシフト)を文部科学省としては話し合ってもらいたいですし,これに関する研究調査や議論から参考になる知見が現場に降りていくことが望ましい.
ところが,満を持して取り組みだしたのが「SNSの活用方法」なんです.参っちゃうよね.
まさに,「出会い系かよ!」

いえ,SNSを使うことがダメだと言っているわけじゃないんです.
もう既にSNSを使って生徒との対話を試みている先生方は現場にたくさんいるし,SNSをちょっと “違法的” に活用して生徒指導に役立てている人もいる(大学の後輩がそういう教師で,彼からいろいろ聞いています).
けど,それは生徒との関わりの中において有機的に発生しているコミュニケーション手段の模索なのであって,SNSをどうやって使うのか? ということとは理念や思想が異なります.

百歩譲って,これまでにSNSを使って「いじめ相談」をしてきた教師の体験談や成功/失敗事例をまとめ,それを全国に普及させるっていうのであれば分かります.願わくば,このワーキンググループもそういう方向で落ち着いてもらえると幸いです.期待できませんけど.

考えてみれば,今でも電話を使った「いじめ相談窓口」みたいなものはあって,これはちょうど「テレクラ(テレフォンクラブ)」に相当するものと言っていいでしょう.テレクラって今の学生は知りませんね.懐かしい響きです.
これは別に相談窓口を批判しているわけじゃありません.人間というのは,困った時はそういうところに救いを求めるという意味において,いじめも性欲も変わらないということです.
テレクラが出会い系サイトに変わってきたように,すなわち相談窓口も電話からネットに変わるわけですね.

ただ,指摘しておきたいのは,テレクラや出会い系サイトにより得られる「救い」が限られたものであるのと同様,SNSを活用したところで救われる「いじめ」も限られたものになるであろうことです.
そういうところからしても,SNSを相談窓口として活用する方法を検討する前に,現場の教師を活かせる改善策や,子供と向き合うために負担を減らす制度づくりに取り組むことが先ではないかと思うのです.