2016年8月1日月曜日

オープンキャンパスの来場者数を想う

昨日は「映画は自宅で見るもの」と決めている私を映画館まで足を運ばせた『シン・ゴジラ』の話題をしましたが,そう言えば都知事選もあったのですね.
東京はもう終わってる地域なのであんまり興味ないのですけど,
こういう選挙とよく似たものに大学のオープンキャンパスの来場者数があります.
入試もそんな感じ.「終わってる」というのも同じです.

我々大学教員も,夏は「サマー・オープンキャンパス」と銘打ったイベントに駆り出されます.
私もさっきまで高校生や保護者向けの「模擬授業・体験授業」のパワポスライドを作成していました.
もちろん,「体験だから」とバカ正直に大学でやっている授業をそのまま高校生にやると大変な事態になるので,飲み込みやすいように噛み砕いて擦り潰して流動食みたいにして提供します.

オープンキャンパスとは「お見合い」です.
相手の本当のところは分からないイベントです.
「ご趣味は?」
と聞かれて,
「エクセルだけで統計処理作業をする方法をいろいろ模索するのが好きでして,それをブログにアップして閲覧数を稼いで楽しんでいます」
などとバカ正直に言っても私の性的魅力は上がりません.
そこはしっかりと,
「フットサルが好きですね.たまにワンデー大会に友達と一緒に出場しています」
って応えるのが正解です.

さて,夏にやるので「サマー・オープンキャンパス」と呼ばれているわけですが.
ということは,「スプリング」も「オータム」も「ウインター」もある大学があります.
学生募集につながるんだそうです.
このオープンキャンパスですが,
(1)年間を通して開いている大学ほど経営難
(2)連日開いている大学ほどブラック
と解釈してください.

より詳細に言いますと,(1)の「年間を通して開いている大学」というのは,受験者数低下や経営状況に焦り始めた大学を意味します.
◯◯大学は春にもやってるらしいぞ.やっぱりたくさんやったほうが広告になって学生募集につながるんだろう,と素人発想で考えるものの,高頻度でやると疲れるし学内から不満が出るので散発的にやる,っていうことです.

年間を通さなくても,(2)のように「特定の時期に集中的に実施する大学」があります.勘違いしてもらっちゃ困るのは,大規模大学が連日・日替わりプログラムでやるっていうのとは異なります.連日同じ学部学科の同じ趣旨のプログラムが続くということです.
こういう大学は,連日同じ人員を割くための命令・統率が利いていることを意味します.

実際のところ,両方該当する大学が多いんですけど.

高校生の皆さんとしては,どちらかって言うと(2)の大学には行かないほうが身のためです.大学教育を受けられない可能性があります.
2日連続で行ってみて,目当ての学科のプログラムに昨日と同じ教員達が連日張り付いていたらビンゴです.その大学は受験候補から外しましょう.
「やったほうがいい」よりも「やってはいけない」を選別することのほうが重要.これは人生何事においても同様です.

オープンキャンパスって,企画する方としては大変なんです.
私が今勤めているような経営に余裕のある大学は別ですが,そうでないところでは教職員一同必死こいてやってます.
必死こいてやっているうちに,気分はハイになっていきます.灰ではありません.Highです.

すると,「これだけ苦労しているんだから,どうせなら盛大に盛り上がるといいな」っていう考えを持つようになるんです.
当初は面倒くさがってたのに,いつの間にか「成功」を望むようになる.
不思議ですね.

で,オープンキャンパス当日も教職員共々手を取り合って頑張ります.
開門前に「エイエイ,オー」の勝鬨をあげようとする痛い人もいます.

そんな大学は,来場者数をしっかりカウントするんです.
そして夕方になったら,「今日は過去最多の来場者数でした」などと発表します.
延べ人数は何人だったか,実質は何人だったか,パンフレットを渡せたのは何組いたか,なんてことを元気に報告するんです.

そのうち,理事長だとか入試・広報的な部署の長がマイクを持って,
「これも今日の皆さんのご尽力の賜物です」
などと言ってくれるので,拍手が起こります.

当たり前ですが,オープンキャンパス当日の来場者数は教職員の頑張りでなんとかなるものではありません.
その大学が5年,10年前にやってきたことの結果であり,身も蓋もないことを言えば昨今の高校生の「ブーム」です.
より丁寧に言えば,10年以上前に卒業した人達の評判がその大学の人気を決めます.
つまり,オープンキャンパスの来場者数というのは「前評判」のスコアを意味します.

オープンキャンパス.
こんなものに尽力する大学に未来はありません.最近は “その大学” と関係のないイベントを盛り込もうとする経営陣もいる.
著名人を呼んでトークショーとか,地域の人達を交えたスポーツ大会とか.
こういう新しい企画を次々考えるために,夜中まで苦労している教職員がいます.
憐れですね.

そのエネルギーのいくつかを教材研究や学術研究,そして学生対応に向ければ「大学としての資源」が高まるはずなのに.
実際,私がいる学科では広報を控えることにしました.意味ないからです.
広報活動を嫌がる教員が圧倒的に多いということもありますが,広報しなくても受験生は勝手に来ることが分かったからです.なぜって,学内でも評判がいいし,入学時の偏差値の割に卒業生が優秀です.
ちゃんと卒業生を育てれば,それなりの評判はついてきます.それが何よりの広報であり,この国のためにもなっている.
でもそれは,オープンキャンパスで伝えられることではりません.

高校生にしたって,こんなオープンキャンパスで一体何を得ようと言うのでしょう.得られるものなんて何もないじゃないですか.
オープンキャンパスに行ったことで,受験したい大学が変わるなんてことはまずない.そもそも,オープンキャンパスごときで大学の何を知ったつもりになっているのか.

そんなに大学のことを知りたいのであれば,普段の授業中の様子を見学することです.
どうしても気になるというのなら,大学教員の研究室に訪ねてみればいい.
少なくとも私のゼミであれば,高校生であろうといつでも体験してもらって大丈夫です.
そういうつもりがないのであれば,おそらくは「ブランド」と「偏差値」と「専攻」で決めるんでしょ?(アンケート結果ではそう出ています)
いや,それを批判しているわけではありません.
そうした大学選びの只なかにあって,オープンキャンパスというイベントの無意味さに気づくべきなのです.

いや,皆気づいています.
実行するのが怖いだけなのです.
でも,オープンキャンパスを侮るなかれ.これをのさばらせることは,大学教育の崩壊を加速させていることを意味します.


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