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大学生用:社会人(かつての学生)の苦労話は聞いてはいけない

数年前からこの手のニュースが出るようになっていますが,今年もこういう調査が行われたようです.
「1日の生活費677円」大学生の仕送りが過去最低に(FNNプライムオンライン 2019.4.3)
1日あたりの生活費 が677円。この金額で一体どんな生活をしているのか?
今どきのリアルな学生生活事情を取材した。
アルバイトと自炊は必須!? アプリも活用
大学2年の女子学生:仕送りはなくて、家賃だけ払ってもらってる。(家賃は)4万円です。(生活は)バイトがないと結構キツイです。1日の食費は200円ほどです。
大学2年の男子学生:仕送り11万円もらってます。4万5000円が生活費で、1食にかけられるお金は、高くても500円とかそのくらい。僕も(1日)2食とかでやってるので。
 大学4年の男子学生:仕送りはないので、生活費は家賃(約4万5000円)を奨学金で払って、残りの生活費、光熱費とか食費とかはバイトで稼いでます。バイト代は月に7~8万円ぐらいです。
以前からこのブログでも書いているように,ここ15年ほどの大学生を定点観測してきた大学教員である私は「学生の貧困化」を感じていました.
そういう貧乏学生に向けた記事も書いています.

すでに私が学生の頃(2000年代初頭)から,学生たちから「生活する上でお金が苦しい」という声はありました.
そのたびに「俺達が学生の頃はもっと大変だったんだぞ」「今どきの学生は金銭感覚がおかしい」という反論が元学生,つまり社会人からあったのですが,これは嘘,もしくは勘違いです.
調査データの出典元から画像を引っ張ってきながら説明します.
私立大学新入生の家計負担調査2018年度(PDFページ:東京私大教連HPより)
まず,2000年代初頭から「家計が苦しい」という声が出てきたのも,学生たちの主観的感覚ではありません.
実際にその時期から世帯収入が激減しています.
これは,1998年から現在まで続いているデフレ不況によるものであることは論を俟たないでしょう.

学生も親の心配をするものです.
自分の親の懐事情を知れば,いわゆる「(過去の)学生らしい生活」を捨てて,節制生活をしないといけないと考えるのは当然のこと.

あと,この「俺達が学生の頃はもっと・・・」という人は,40代以上の人だということが分かります.
おそらく,20代〜30代の社会人は「あぁ〜,分かるよ君たち」という目で見ています.

世帯収入が下がるのですから,もちろん仕送りも減ります.

親からの一月の仕送り額は,1994年の12万4900円をピークにその後ずっと下がり続け,現在は8万3100円.ちょうど1年に100万円の計算です.
親の所得と比べて仕送り額の減少率がなだらかなのは,「学生の仕送り額の相場」というものがあったからでしょう.
職場やママ友との会話から「一人っ子ならこれくらい.兄弟2人を行かせたんならこれくらい」といったもの出てきますし,子供も子供で「友達は10万円くらいもらってるよ」などと言ってくる.
でも,所得減少の影響はどうしても避けられず,ズルズルと下がり続けたわけです.

学生も,「かつての大学生は,パチンコやスロット,カラオケ,合コン,車で遠出して朝まで飲み会」なんてことをしていたらしいという伝説は知っているものの,親の経済状況や就活の厳しさを天秤にかけたら,「遊んでる場合じゃない.節約しなければ」という気持ちになります.
そのうち,「お前さぁ,一月にいくらぐらい使ってんの?」って聞くと,
「がんばって2万円くらいに抑えてるよ」なんていう奴も徐々に現れてくるもんだから,
「やばい,俺ちょっと使い過ぎてるのかも・・・」
という罪悪感が出てきて,そういう空気が学生たちの間に蔓延してきます.

そんなわけで,冒頭のニュース記事にもあるように,現在の学生の平均的な「1日の生活費」は677円ほどになっています.
でもこれは平均的な学生です.これより厳しい生活をしている学生も半数近くいることをお忘れなく.

30代半ば以下の人たちとそれ以上の世代から,学生生活に大きな違いが出てきます.
ちょうど私がその境界の世代ということもあって,感覚的にもそんな気がします.私達より上の世代は少しバブリーな人が散見されました.

アルバイトも,「生活に余裕を持たせる」ではなく,「生活費を稼ぐ」ためにやっている人が増えてきたのもこの時期です.
地方出身の女子学生なんぞに至っては,下宿して大学に通うために水商売や風俗に手を出すというのが,冗談じゃなく結構いるとのこと.コンビニやスーパーで働くよりも時間あたりの収入が多いので,本当に真面目な話として勉強する時間が確保できるからです.

そうした学生の現状を解説したネットニュースもあります.
【1日の生活費677円】最近の学生はみんな貧乏です(大学生応援サイト)

私のゼミに在籍していた女子学生から聞いたのですが,その友達はキャバクラやガールズバーでバイトしているとのことでした.
さらに,その友達の友達は風俗で稼いでいるとの噂があるそうです.地方出身の下宿学生であれば,知り合いのオッサンが客として入ってくる危険性も少ないということらしい.
さらに言えば,お店の側もそのへんは女の子と男性客に配慮しており,大学生の女の子と大学生の男性客を合わせないように,「学割」と称したサービスも用意されています.

「学生は遊ぶ金欲しさにバイトしている.ちゃんと勉強する時間をとってもらいたいものだ」という認識の教授陣もまだまだ結構いたりします.
でも,もうそんな時代は遥か過去のものです.考えを改めてもらいたいですね.

あと,自動車を持っている率とか,麻雀やパチンコで遊んだことがある率,週に1回は飲み会をしている率なども,この「2000年」の世代から断絶があります.
私達が学生の頃には,学生がパチンコとか麻雀なんて想像できませんでした.そんな暇があるならバイトしろ,インターン先を探せってな感じ.でも,2000年頃まで学生やってた人たちには日常であり,常識なんですよね.
つまり,いわゆる若者の「自動車離れ」「麻雀・パチンコ離れ」「飲み会離れ」などと呼ばれているものは,どれも生活費が苦しいから離れていっただけのことです.

逆に,今の学生はバイトやインターシップの合間に一人や少人数できる娯楽が主流でしょう.その典型がスマホのゲームとかインスタグラム,アクティブ派だとフットサルとかダンスが流行しています.

今どきの学生諸君は,40歳代以上のオッサンたちがのたまう「俺達が学生の頃はカラオケにガンガン行ったぞ」とか「ドライブを楽しんだぞ」といった話を聞いても,
「 ( ´_ゝ`) フーン 」
という対応をするだけでOKです.
それは,彼らにバイタリティがあったわけでも,クリエイティブで積極的だったわけでもなく,たんに自由にできるお金があったらかです.

もっと言えば,そもそも今どきの大学生には「流行」というものがないかと.
流行していると,逆にそれをやりたくないっていう反応があります.
実際,自分自身や周囲の学生たちを見てもそんな感じがするでしょ?