2014年12月8日月曜日

井戸端スポーツ会議 part 10「スポーツをすると勉強ができるようになる」

もっとブログ更新頻度を高めようということで,パソコンの中に入っている資料・データから面白そうなネタを出していくことにしました.

今回は,「スポーツをすると頭が良くなる」という,たまに耳にする話がどれだけ科学的根拠があるのか,その研究報告をご紹介します.

図1 中学時代の運動部入部率と進学した高校入学偏差値
有名なのが,平成19年度の文部科学省学校基本調査で上がってきたデータです(図1).
中学校の運動部入部率(縦軸)と進学した高校入学偏差値(横軸)に正の相関があるというものです.

もちろん例外はあるものの,文部科学省のようなお固い(最近はチャラいけど)省庁が,このような事を言い出しました.

「でもこれって,その入部率の話でしょ.環境や個人の議論になってきたら違ってくるのでは?」
というのが真っ当な疑問だと思います.

運動やスポーツによって学習能力が高まるという点を研究したものは結構あります.
その中からいくつか引っぱってみました.

まず,「体力が高い子供は勉強ができるか?」という点です.
その調査結果が図2です.体力が高い・低い子供たちに同じ学習課題を課して,そのテスト結果を比較しています.
図2
やはり高体力群の方が成績が良いとのこと.興味深いのは,毎回の勉強においてテスト課題を課さずに行った場合に差が現れやすいという点です.
つまり,模擬テストのような勉強方式ではなく,普段の何気ない学習のようなところにおいて体力の有る無しによる影響が出てきやすいかもしれないわけです.

次は「スポーツや運動をしてから勉強をすると良い」という可能性を示すものです.
以下の図3は,20分間の歩行運動後15分ぐらいしてから勉強をさせた群と,運動せずに勉強をした群のテスト結果を比較したものです.
図3
20分間の歩行運動でも違いが出てきます.その違いは特に「読解力」に現れてくるようですね.
この研究では認知機能の調査も行われておりまして,そこでも運動の効果がみられています.
Modified Flanker Taskというテストを行った結果が,以下の図4.
※フランカータスクって何ですか?という場合はこちら→http://en.wikipedia.org/wiki/Eriksen_flanker_task
図4
学校とかでの休み時間にはスポーツをさせると良い,ということを支持する研究です.

そんな事を聞かされていたら,「子供じゃなくて私達大人も運動をすることで勉強できるようになるのでしょうか?」という期待をしたくなるものです.
その期待に沿う結果を示すのが,以下の図5です.
図5
テスト課題は語彙記憶です.記憶力を評価しています.
高強度運動(筋力トレーニング,ダッシュなど)をしてから勉強した方が,中等度運動(ジョギングなど)や安静にしてから勉強するよりも記憶力が高まるという結果となりました.

高強度運動の方が効果的な理由としては,その方がBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加しやすいから,ということが考えられています.
以下は高強度運動によってBDNFが増加することを調査したものです.
図6
ただし,運動直後や運動しながら勉強すると学習効果が低下することも知られていますので,そこらへんは勘違いしないように気をつけてください.

具体的な記憶力アップの提案としては,全力運動がちょいちょい含まれるような各種スポーツ(フットサルやテニス,野球など)や,密度の濃ゆい筋力トレーニングを日々の生活に入れていくことが推奨されます.

また,一日のどこかで長めの階段を素早く駆け上がるような運動を入れるのも効果的かもしれませんね.
皆が見ている前だと恥ずかしいでしょうから,誰もいないところで密かに階段ダッシュをするのはオススメです.

私は授業やなんかで,「テスト期間前になったら,マサイ族のように連続リバウンドジャンプをしなさい.もう跳べない,というところまで続けたら,しばらく休憩してから勉強すると良いですよ」と学生たちにアドバイスしています.
そのうち,7月中旬および1月中旬頃になると,本学の至る所で学生が飛び跳ねている光景が風物詩になる日も近いかもしれません.
そうなったら面白いな,って思っています.

毎日キツい運動をやれというのは現実的ではありませんが,そうした運動習慣,スポーツライフをすることで,皆さんの認知機能や頭の回転も高まっていくことが期待されるわけです.

もう少し詳しく知りたい人は,以下の本がオススメです.


井戸端スポーツ会議