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ウィズコロナ・アフターコロナの大学事情

退学していいんだ|在学・卒業してもメリットないじゃん|が危ない


やっぱりヤバい事態に突入してきたようです.
大学生を取り巻く状況が悪化しているというニュース.

190大学、年度末に休退学増加を予想 コロナで生活苦(朝日新聞 2020.11.29)
調査は9月25日~11月24日、国公私立の767大学を対象に「新型コロナウイルスによる影響」などを尋ね、82%にあたる631大学が回答した。6~7月の緊急調査と同じ「就職活動」「経営状態」など14項目の選択肢を示し、「現時点(10月上旬)」と「年度末ごろ(来年3月)」について、特に大きな影響があると考える問題を、学長に五つまで選んでもらった。 
10月上旬で最も多いのは「学生募集」で78%、「授業の実施方法」が60%、「就職活動」が57%で続いた。来年3月の予想については、卒業式などの「行事」75%に「学生募集」55%が続き、コロナ不況で採用を減らす企業が相次いだことを受け、54%が「就職活動」を挙げた。 
不況で家計が苦しくなり、学費を払えない学生が増えるとみる大学も多い。「退学・休学の増加」は緊急調査時の7月に9%だったが、今回は10月に15%、来年3月には30%に急増。特に、国公立より学費が高い私立大は35%に達する。岐阜県の小規模私立大は「すでに経済的理由で退学した者がいる。今後も同様の理由で退学・休学する者も出てくると考えられる」と危機感を募らせる。

この朝日新聞のニュースは動画配信もされています.



たぶんですけど,今年度は爆発的に退学・休学が増えることはないと思います.
どれくらいが「多い」「少ない」という線引になるかは微妙なところですけど.
直感的なところでは,5000人規模の大学で,例年の休退学者にプラス50人くらいってところじゃないでしょうか.
つまり,100人に1人です.

これくらいなら,「衝撃的」な数字ではあるものの,大学運営にそこまで大きく影響するものではありません.

しかし,問題はそれが来年度もずっと続いてしまう場合です.

学生の多くは今年度の休退学および卒業生の様子を見ています.
苦しいけど,なんとか今年は休退学を耐えたという学生たちは,結構な数になるはずです.

とりあえず今は頑張っておいて,「大学卒業」の学歴をつけておくことが,コロナ禍を生き残っていくための手がかりになると信じていることでしょう.

そんな「耐えた学生」たちは,休退学した人や,コロナ禍で就職活動をした人たちが,その後どのような進路と生活を送っているのか気になります.

その時,実は休退学した人であっても普通に就職できていたり,これまでの「就活」とは異なる手続きで特殊な仕事を見つけていたりする情報に触れることになるでしょう.

これについては,このブログでは別角度から何度も述べていることですが,そもそも,
「就職や業務・事業スキルと,学歴・学業成績の関係性は弱い」
からです.

で,過去記事では「だから,就職のために大学に通うというのは倒錯している」と述べてきたのです.
が,今は事情がちょっと思わぬ方向に変わってきましたね.

もっと言えば,
「大卒と高卒では,生涯賃金に大きな差がある」
というのも,近年では崩れつつあります,っていうかほぼ崩れてます.

それについて,こんな過去記事を書いたことがあります.

で,その記事のタイトルにした「2025年」ですが,この新型コロナ騒動によって加速・繰り上がったと考えられます.
だから,追記としてこんな記事も今春(4月)に書きました.


卒業生の就職活動状況も,追い打ち効果があるでしょう.
思い通りの就職活動ができていない今年度の卒業生と,来年度の4年生の様子も見ていると,
「苦労して大学に通っていることにメリットってあるのだろうか?」
と考えだす学生・保護者は増えることと思います.

これに新型コロナの影響が続いていたり,来年,下手に「オリンピック特需」なんかが生まれたりすると,これまで信仰されてきた「学歴」とは無関係のところで,経済的安定が成り立っていることに皆が気づいてしまうわけ.

そしたら,
「あ,そうか,退学してもいいんだ」
「在学・卒業してもメリットないじゃん」
ってなってくる可能性があります.

すると,一気に雪崩を打って休退学者が増加する可能性が高いですね.
この様子だと,2022年頃から動き出すのかもしれません.

ひとまず,高偏差値大学,難関大学,有名大学については安心していいでしょう.
しかし,その他の大学はかなり経営が危険水域に入ります.

さらに,世間の人々は,こうした風潮を楽観視することでしょう.
「通う価値のない大学なんて辞めて正解だと思うよ」
「大学に行って遊ぶくらいなら,さっさと仕事をした方がいい.キャリアアップは学歴とは関係ないから」

そんな声がネット上で踊るはず.
それに釣られて大学を退学する学生も増加するというサイクルに入ります.


現在の大学事情として,私が極めて問題だと考えているのは,「オフライン授業」や「対面授業」の確保に対する真剣味が足りないというところです.

そもそも,大学の魅力や存在意義は,まさにここにあります.

もちろん,知識の伝達という目的においては,オンライン授業だけでもOKでしょう.
むしろ,私はその目的のためなら,わざわざ対面授業をする必要はないと考えています.
これについては,ちょっとしたシリーズで「あるべき大学改革論」を書いたことがあります.

私が言いたいのは,今はこのコロナ禍で緊急対応しかできていない「大学のオンライン授業」ですが,
「オンラインで構わないことと,オフラインじゃなきゃダメなことの整理」
が喫緊の課題だということです.
現在は,それがごっちゃになってて混乱を生んでいます.
教員も慣れていないわけだし.

これには当然ながら,以前までの授業方式に「戻す」ことを希望する先生方もたくさんいることでしょう.
ですが,これについては私は「ダメ」だと思っています.

なぜならこれは,新型コロナウイルスの騒動が収まろうが収まるまいが関係のない,日本や世界の大学が向き合わなければならない,将来のための重要課題だからです.


私は,今ある大学を潰すことは日本にとってマイナスでしかないと思っています.
2〜3年後,きっと世間の人々は「レベルの低い大学なんて,どんどん潰れろ」という声を今以上に発している状態にあると思いますが,なんとか耐えてほしいですね.

そのためにも,大学の授業方式を大きく見直す時期にあると思うのです.
そして,「大学で学ぶ」ことそれ自体にも,社会的な転換が必要だと考えています.


これらについて,詳しくは過去記事をどうぞ.

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