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コロナショック|大学運営方法について再考する機会かもしれない

加速するであろう「大学に行く必要はない論」


近い将来,それは例えば2025年くらいから,
「実は大学に行く必要はないんじゃないか?」
という意見が,そこかしこで芽吹いてくるであろう,という記事を書いたことがあります.
大学関係者が知っておくべき,2025年頃に受験者数が激減する未来予想図

その記事では,
2025年くらいから,我が子を大学に通わせられる世帯が激減するから,現在と同じような規模の学費を支払わせて経営する方式は成り立たなくなるよ.
というものでした.

理由は以下のようなもの.
すなわち,日本では2025年頃になると・・・,

(1)高学歴なのに低所得な世帯(就職氷河期世代が受験生の親というケース)が増える

(2)そしてこの世代は,転職キャリアアップで美味しい思いをした人間のパターンを見聞きしている

(3)そんな親は,我が子を「大学」に通わせようと考えにくいし,そもそも所得が少ないから通わせられない


つまり,大学に入学・卒業することにメリットや旨味がないことを痛感している世代にあたるわけです.

ところが,今回の新型コロナ騒動においては,政府による見事なまでの『放置政策』によって,経済的に困窮する世帯が激増する予定であり,私が推測していた「2025年」よりもスケジュールが繰り上がりそうなんです.


すでに,そんなニュースが駆け巡っています.
首相、大学生の授業料支払い延期「早くやらないと」(毎日新聞 2020.4.24)
学生13人に1人が退学検討 バイト減6割、親の収入も…学費に不安(毎日新聞 2020.4.22)
新型コロナウイルスの感染拡大に関する学生団体の調査で、大学生らの約6割が、アルバイトの収入が減ったり、なくなったりしたと回答したことが22日、分かった。親の収入がなくなった、または減ったと答えた学生も約4割に上り、調査に答えた学生の13人に1人が、大学を辞める検討を始めていると回答するなど、多くの学生が経済的に厳しい状況にあることが浮かんだ。

そのうち,来年度に向けた高校の進学戦略において,
大学関係者が知っておくべき,2025年頃に受験者数が激減する未来予想図
で紹介したような事実が流布されるようになるんじゃないかと思います.

例えば,上記の記事では以下のような調査データをお示ししました.
そこから転載しておきます.

データ元は労働政策研究所・研究機構の「ユースフル労働統計2018」です.



実際,
「大卒の方が所得が大きい」
と言えたのは過去のこと.

この20年間ほどで徐々に浸透してきた「実力主義」や「同一労働同一賃金」の色は,現在において未だ『完全』ではないものの,その影響は社会と企業に対し間違いなく及ぼしています.

例えば,2016年時点での男性の生涯賃金を平均値でみると,
大卒は2億9千万円,
高卒は2億5千万円となり,
その差は4千万円しかありません.

企業規模別では,大規模企業では,
大卒3億2千万円,
高卒2億8千万円となり,
その差は4千万円ですが,

中規模企業では,
大卒2億5千万円,
高卒2億4千万円となり
その差が1千万円まで縮まります.
これは小規模企業でも同様です.


つまり,「大卒の方が所得が大きい」というのは,大学卒業者の多くが大企業社員やエリート社員,高級官僚だった時代のもの.
2016年時点においては,かなり相殺されてきているんです.
現在においては,中小規模の企業に就職した場合は大卒も高卒もほぼ同じ所得になります.


さらに言えば,大学に通った場合には学費・生活費も加算されます.
大学にかかった費用を入れると,その差はもっと縮まるのです.

ベネッセの調査によると,大学在学中にかかる費用は諸々含めて,
国立大学:214万円
私立大学(文系):366万円
私立大学(理系):504万円

下宿学生なら,家賃や生活費も別途必要です.
そうなると,
国立大学:約400万円〜550万円
私立(文系):550万円〜700万円
私立(理系):700万円〜850万円
くらいが相場となります.

私立の文系大学を卒業した場合だと,約600万円,下宿生では1千万円ビハインドからスタートすることになるのです.

ですから,その人が大規模企業以外の仕事についた場合,「大学卒業」という学歴による賃金の優位性はほぼ無くなります.




大学なんか行かずに,身の丈にあった仕事に就けばいいんじゃない?論


昨年,世間を賑わせた大学入学共通テスト問題における,荻生田文科大臣による「身の丈発言」っていうのがありましたよね.
「身の丈」発言に批判「格差容認か」 萩生田氏撤回せず(朝日新聞 2019.10.29)
2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間試験について、萩生田光一文部科学相が「身の丈に合わせてがんばって」と発言し、28日、謝罪に追い込まれた。教育格差を容認するような教育行政トップの発言に、受験生や教育関係者から憤りの声が上がった。
これ,発言自体は現代社会の政治家としては不適切ですし,文部科学大臣としても失格だったと思いますけど,自民党政治の将来像を示すものとしては,極めて明確な表現でした.
つまり,日本の未来の教育は,所得に合わせて差をつけることを目指しているわけで,そうなるように進んでいるんです.

ですから,大学に行くかどうかも「身の丈」に合わせる時代になります.


結果として,大学には高所得者層が通うようになり,低所得者層は高卒・専門学校卒で仕事に就きます.

そして,採用条件に「大卒」が求められる職業は,高所得者層ばかりになってきます.
こういう採用条件の職業は,得てして社会情勢に影響を与える職業(公務員,大企業)が多いですから,高所得者層による支配がさらに加速するわけです.

こうした社会的な歪みが続けば,どこかで一気に崩壊か爆発が起きます.
そうならないために現代の教育制度は組み立てられるべきなのですが,これを現代の日本政府は全力で逆走しているんです.


よく,ネットやいくつかのメディアでは,
「大学は一部の有力なものだけ残して,あとのFラン大学は潰した方がいい」
などと,けったいな発言を見聞きします.

私はこれには反対です.
大学を潰して間口を狭めるよりも,現状の教育体制を改善する方が効率的だし,高等教育の機会を増やして,その恩恵を授かる日本人の数を増やすことの方が圧倒的に有益です.


それに,私はこのブログ開設以来,再三再四ずっと,
「大学はより良い就職先にありつくために通うものではない」
と繰り返してきました.

より良い就職先にありつくために大学は存在すると認識している輩が,大学の外にも中にも多過ぎるから,この状況をなんとかしないと結果的に大学教育が崩壊する事態になっちゃうよ,と警鐘を鳴らしてきました.

多分,今回のコロナ騒動が大学崩壊への「トドメ」になります.

そうならないために,どうすればいいか? っていう話はもうありません.
もうダメだ.手遅れだ.
それが私の回答です.


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