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2019年版:本当に危ない大学とはこういうところだ part 1



大学教育に絶望感を抱いていた2013年に,
こんなホームページの大学は危ない
を書きました.これが全ての始まりです.

自分でも書いてて面白かったし,その記事を読んでくれる人もたくさんいたので,(期待に応えようという気持ちもあり)いろいろと続編を出しました.
こんな挙動の教員がいる大学は危ない
こんなパンフレットの大学は危ない

そんな斜め視点の記事よりも,ダイレクトなものをと思い,
「教職員用」危ない大学とはこういうところだ
っていう記事も書きました.
これも好評を得ることができたようです.
ビビったのは,このブログを読んだ日経新聞の記者さんも取材に来たことです.

さて,上記の記事を書いていた頃は,私もまだ現役で「大学教員」をやっている身でしたので,あんまりに真相に近い部分をえぐることはできませんでした.
でも,このたび私は大学教員を引退することにしましたので,今後は気兼ねなくもうちょっと突っ込んだ内容を書くことにします.

 
 

大学業界ではかねてより「2018年問題」が水面下で恐れられていました.
2018年問題というのは,特にこの時期から18歳人口が激減することが想定されていて,これにより経営が立ち行かなくなる大学が顕著に現れるとされていたからです.
つまり,「危ない大学」へのトドメが2018年問題ということです.
ウィキペディアにも載っているくらい有名な事象なので,詳細はそちらをご確認ください.
2018年問題(wikipedia)

実際のところ,2018年問題の影響が現れるのは今年からです.
昨年度の入試状況が,各大学いろいろとあったかと思いますけど,その結果と分析を受けて,今年が勝負の年,もしくは絶望的な想いで新年度を迎えている大学は多いことと存じます.

では,細かいことをは省いて,分水嶺となる2019年版の「本当に危ない大学とはこういうところだ」をご確認ください.

自分が通っている大学は有名校でもブランド校でもないと認識している学生はいるでしょう.
「実はうちの大学は危ない大学ではないか?」と疑っている学生も多いかと思いますが,それをチェックする上でも有益なものをピックアップしました.
とは言うものの,こういうブログ記事をネット検索している時点で,もし君が「危ない大学」に所属している学生だとしても,将来有望な人物です.がんばりましょう.
教職員の方々におかれましては,「あぁ,そうそう.こういう状態はもう末期だよね」と,自虐的に楽しんでください.


(1)事実上,図書館がない
教職員はもちろんのこと,学生も簡単に判別できるのが,この「図書館がない」です.
もちろん,「図書館」と名付けられた場所はあります.でも,そこに一般的な図書館はないのです.

どういう施設が一般的な図書館なのか分からない,高校の図書館までしか知らない,という人は,小規模の市立図書館を覗いてみましょう.あれが最低ラインです.
なんなら,別の大学に潜り込んでみるのもありです.普通の大学の図書館のレベルがわかります.
目安としては,書庫の広さはバスケットボール・コート1面分以上.読書スペースも同じような広さでしょうか.
もちろん,設置されている学部学科に関連する本が,授業で使う使わない関係なく大量に収められているはずです.

どうして危ない大学では図書館が無くなるのかというと,経費を大きく食う施設だからです.
ところが,危ない大学に在籍している学生は,図書館の利用度が低い.
なので図書館を使わないといけない状態にしてやろうと,教員が授業で課題図書とかレポート作成を指示しても,碌にやってこない.
だから,教員も呆れて図書館を使わなくてもいい授業をやるようになる.
結果,学生の図書館利用はさらに低下する.という悪循環になります.

でも,先ほど述べましたように,図書館の維持費は高いんです.
大学側としては,学生がぜんぜん使っていないのに,「図書館」の機能を高めたり維持するのはムダだと思うようになります.
とは言え,大学において図書館は最重要施設の一つです.
だから一応は用意しています.
でも,どうせ使わないのであれば,図書館があるってことにして,更新やメンテナンスをしないで放置しておこうという戦略を取り始めるのが「危ない大学」です.
酷いところでは,授業の課題に使う書籍や,資格取得や公務員試験などの受験勉強用の書籍しか置いてなかったり.
しまいには「読まなくなった古い本は捨てよう」とか言い出すこともあります.


(2)なんでもない理由で教員や職員のクビが飛ぶ
「別に悪くもない普通の先生だったのに,むしろ人気があった先生だったのに,なぜか今年から出勤しておらず,理由を探しても分からない」という教員を見つけたら,そこは危ない大学の可能性大です.
考えられる理由は2つあります.
1つは,その先生が本当に有能だったので,年度末ギリギリで他大学へ栄転されたというもの.
2つ目は,学生から人気はあるが,ややクセがある,もしくは,教員として有能だが,それだけに積極的に大学運営の正論を教授会などで語ってしまうため,それを大学経営陣に睨まれて,
「この際,こいつをリストラ対象にしちゃおう」
ということで辞めさせられたパターンです.

前者は普通の「危ない大学」ですが,後者であれば「マジで本当に危ない大学」と言っていいでしょう.

辞めさせられ方としては,過去記事でも紹介した「スパイ」「トラップ」を活用してスキャンダルとか辞任理由を用意されたり,理事会とか政治家関係を使った圧力(いちゃもん)です.
大学におけるハニートラップを交えて
危ない大学に奉職してしまったとき「スパイ対策法」

たとえ「学生による授業評価アンケート」が高得点であったとしても,気に入らない教員であれば「教員として相応しくない言動・態度」を練り上げられて辞めさせられます.
なんのことはない,末期症状に陥った組織でよくある「身内・お友達経営をしたがる傾向」の現れです.

 


(3)若手教員が「◯◯委員長」とか,果ては学科長とか教務部長をやっている
あなたが学生であれば,若手教員を見つけてこう尋ねてみましょう.
「先生って,何か大学で役職についているんですか?」
いや,この聞き方はちょっと学生らしくないので,もうちょっとぼかした表現にしてください.
なんにせよ,例えば30歳代の教員が◯◯委員長をやらされているようだと,そこは切羽詰まった大学や部署です.

もっと分かりやすく「危ない大学」なのは,40歳代の教員が学科長とか教務部長といったレベルの役職についていることです.
場合によっては,若手の准教授とか講師が学科長をやっている「超絶危険大学」もあります.
学生にとっては大学教員の身分とか役職ってよく分からないかと思いますが,この機会に調べてみてください.

初心者にも覚えやすいところとしては,「学部・学科長」「教務部長」「学生部長」「入試部長」といった役職です.
これらは,学内で実力が認められた教員,もしくは一目置かれた教員が担当するものなのですが,原則的には若手教員でも担当可能です.
でも,普通はそんなことはしないんです.対外的にも,明らかにおかしいから.
もし若手教員がこうした役職についているようであれば,学内がのっぴきならない事案により混乱状態にあるか,年輩教員として雇っている奴らが天下り・腰掛け教員ばかりで使い物にならないケースです.


(4)特定の政治家の名前を目にすることが多い
過去記事では少しだけ触れることでしたが,気にせず思い切って書きますね.
政治家の力を使って大学(学園)経営をしているところは多いし,ある意味でそれは普通のことなのですが,特定の有力政治家(国会議員や市議会議員など)の名前ををちょくちょく出してくる大学は,ほぼ間違いなく危ない大学です.
だいたい,自民党の息がかかっているところはヤバいと思っていい.
具体的な大学名は出しませんが,内部の人なら知ってるはず.十中八九,低偏差値の経営難です.

数年前にも,この手の話題としては大きくニュースになった事件が2つありましたね.「モ◯カケ問題」として世間を騒がせました.
いずれの事件も,某国の首相が関わっていたので,なおさら話題になったところです.

別に私は,アンチ自民党でもないし,安◯政権が嫌いだからこの件を語っているのではありません.
素直な傾向として,政治家の,特に自民党の政治力を利用した大学経営をしているところは危ないと言っているだけです.

その理由ですが,政治家の力を借りた大学経営は,比較的楽なんです.
辞めさせたい教員がいたり,欲しい土地や安く購入したい用具やサービスがある時に,政治家の力は強力に作用します.いわゆる「口利き」と言うやつね.
なんだったら,理事長とか会長本人が議員だったりする.

しかし,一般的な大学では,そうした政治家の口利きを使わず経営を進めていこうとします.もしやるとしても,バレないように,目立たないようにやります.
ところが,危ない大学においては違います.経営の立て直しをはかるために,政治家の力をバンバン使うんです.
目安としては,アルバイト職員や非常勤講師,大学院生にも分かるような「政治家の影響力」が見えていれば陽性です.

大学生活を送っていて,誰か特定の政治家をヨイショしているような現象に遭遇したら,結構ヤバい状況にある大学だと認識していいでしょう.


(5)ホームページがやたら地味
おいおい,2012年の時点では「派手なホームページの大学は危ない」と言ってたじゃないか,と思う人もいるでしょう.
こんなホームページの大学は危ない

しかし,時代はあれから7年経ちました.事情はずっと一緒ではありません.
そもそもホームページやウェブサイトのデザインには流行もあるのですから,なにをもって「派手」なのか,その印象も移り変わるものです.

必要もないのにホームページのデザインを華やかなものにする.
それが大学広報のスタンダードになったのが,ここ数年の流れ.
学生にはあれだけ「オリジナリティの必要性」を説いている大学教員も,広報については素人なので,どうしても他大学に追随して「右にならえ」でオリジナリティの乏しいホームページが制作されます.

とは言え,比較的余裕のある大学では,かつての「危ない大学」が広告戦略としてやっていた「ホームページを華美なデザインにする」に,興味本位で取り組めちゃえるんですね.
だから,余裕がある大学は高い予算をかけてホームページ制作会社に「オリジナリティの高いホームページ」を作らせちゃった.
その結果,現在は「優良大学ほどウェブデザインの先進的技術を駆使したホームページ」になってしまいました.

例えば,2012年当時は市役所か個人ブロガーみたいなホームページだった東京大学も,今では意味不明に派手なものになりました.
東京大学ホームページ(東京大学 2019年4月現在)

立教大学とかは,一体なんのホームページなのか分からないデザインです.
立教大学オフィシャルwebサイト(立教大学 2019年4月現在)

まあ,はっきり言って,こういうのは広報委員をやっている大学教員の自己満足です.

反対に,「危ない大学」ではデザインや技術に凝るよりも,とにかく,
「偏差値の低いバカでも情報を得やすい」
ことを重視したウェブ設計にしています.

そこでは,「この大学に入れば将来(就職とか資格合格とか)が約束される」という印象と,
「いかに気楽に簡単にキャンパスライフが送れるか」という甘い言葉が並びます.
そして間髪入れず「では,どういった入試方法があるのか」とか「説明会やオープンキャンパスはいつなのか」といった情報を見つけられやすいようになっています.

具体例を挙げるのは差し控えますが,ためしに自分とこの大学ホームページを確認してみてください.
なお,過去記事で紹介したもので,まだ有効な基準としては,
「学生がジャンプしている写真がある」
「教員紹介がない」
「学内イベントの事後報告ニュースが多い(事前案内がない)」
です.


(6)「私,この授業の専門じゃないんだけど」と堂々と言い訳する教員がいる
そんなこと言ってても,実はちゃんとした授業をやる謙遜した先生はいるものです.
それと勘違いしないよう注意しましょう.
ここで言いたいのは,マジで専門じゃない人が担当していて,学生の目からしても碌な授業になっていない状態を指します.

以前から,危ない大学では「プロパーじゃない教員が授業を担当している」っていう状態はありました.過去記事でも取り上げていましたよね.
でも,そういう状態であることを,学生に向かって言い訳する先生は少なかったんです.

昔(90年代まで)の大学であれば,専門じゃない先生がいい加減な授業をやってても,お咎め無しだったこともあります.
しかし,昨今の大学教育を見る目は厳しくなってきたので,一般的な大学であれば,そういう先生の授業が出ないようにコントロールするようになったんですよ.

学生からも「あの授業やばくないですか?」っていうクレームが入るようになり,それに対処する大学が増えたんですね.
こういうのって非常勤講師に見られる場合が多く,ここ数年の大学では,
「先生,大変僭越ではございますが,学生からこんな要望が出ています」
と言って説得したり,どうしても聞き入れない講師の場合だと,
「すみません,次年度からこの授業は不開講になりまして・・」
と言って切っています.

ところが,本当にマジで危ない大学になってくると,非常勤講師を雇えない事情がある授業では,無理やり専任教員がプロパーじゃない授業を担当することがあります.
人事的な予算削減だったり,資格関連授業であれば,認定団体からの担当教員の縛りがあったりするからです.
もしくは,あまりにブラック大学であることが知れ渡っていて,非常勤講師すら寄り付かない場合,仕方なく専任教員が担当することになるケースです.

これについて教務事務の人と話をすると,
「いやぁ,今年は先生,大変ですね.この授業できるんですか?」
って笑いながら話しかけてきます.
出来るわけねぇだろ,フザケんな!って思いますが,諦めるしかありません.

そんな状態に至り,その先生は思わず口にします.
「私,この授業の専門じゃないんだけどね.ゴメンね」と.
でも,そんなことを口にする先生はまだ良心的です.
学生を思う気持ちを汲んであげましょう.


ひとまず「パート1」はここまで.
パート2がまとまったらアップします.
※ということで,パート2を作りました.
2019年版:本当に危ない大学とはこういうところだ part 2


 
 

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